投資銀行の激務で、命を落とすエリートたち 死ぬほど頑張ってはいけない

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走り続けないといけないビジネスモデル

投資銀行(以下ではすべて、投資銀行部門を指す)の就職志望者が私によく聞くのが、「死ぬほど働かされる激務って、本当ですか?」というものである。

これはファームや部門や国によりけりで一概に言えないのだが、ヒエラルキーの強い日本や韓国(ちなみにこの2国の労働環境が、大手ファームの中では最悪とよく言われる)の会社文化に、投資銀行特有のヒエラルキー文化と過労文化が融合すると、それはそれは悲惨な労働環境が出来上がる。

まず投資銀行部門のビジネスは手数料ビジネスなので、いわゆる“走り続けなければならない”ビジネスモデルである。たとえばアセットベースのミューチュアルファンドのように、一度おカネを受託すれば毎年安定的に運用資産の1%なり2%なりが入ってくるビジネスと異なり、つねに新たな案件を獲得しないと、収入がすぐになくなってしまう。かつ案件がいくらでもあるわけではないので、数少ない案件を獲得するために、競合各社がシノギを削るわけである。

資料の分厚さで勝負するバンカーたち

中には立派なバンカーもいるのだが、そうでない多くのバンカーたちは担当するセクターの、案件が見込めそうな企業を日々回って、資金調達や企業買収に関する提案書を作り、「いかにウチの投資銀行が欧州でオファリングする転換社債の案件ならば、過去3年間で300億から500億の案件に限れば世界一か」みたいな、切り方次第で自分の銀行が1位になるような怪しい資料を必死に作る。そして朝早くから深夜まで提案書づくりに奔走する社員たちには、下に行けばいくほど凄惨な仕事量が運命づけられているのだ。

以前、名だたる海外の大企業のCEOが、私に「この100ページを超える資料を作って熱意を訴えるのは、何も効果がないばかりか迷惑だと、投資銀行員にはわかってほしい。今までで最高のプレゼンは、A3用紙3枚だけ持ってきたバンカーによるものだ」と嘆息していたシーンを思い出す。投資銀行員たちが分厚すぎる資料でもって臨むのは、本質的に重要な提案の質に自信がないことの表れかもしれない。

なおコンサルに関しても200ページの最終プレゼンの中、最も重要ないわゆる“キラーチャート”がしょぼいプレゼンに限って、全体のページ数がやたらと多く、シンプルにワードで書けば3行で終わる内容を、カラフルで複雑な図形に変換して分厚い資料に仕立て上げるものである。

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