75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ 社会保障費は人口変動を踏まえて決めるべし

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膨大する一方の社会保障費だが、今後の人口変動を見て抑制することは可能だ(写真:bee32)

1月23日に開催された経済財政諮問会議で、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」)の更新版を公表した。これは2018年度予算案が決まったことを受け、わが国の経済財政の今後について、一定の仮定を置いて試算するもので、毎年1~2月と7~8月に2度公表している。

今年の「中長期試算」が示す値の焦点は、今夏にも取りまとめる予定の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下、「骨太方針2018」)で定めることとなっている、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の達成時期とそれを実現する具体策だ。特に、消費税率を10%超に上げないことを前提とした財政健全化を検討するなら、歳出の効率化、無駄な支出の削減を積極的に進めていくしかない。

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第2次安倍内閣以降でも、歳出改革には取り組んできた。2015年6月に閣議決定された「骨太方針2015」の中では、「経済・財政再生計画」として、2018年度予算までの財政運営について定めた。2016~2018年度を集中改革期間と位置付け、第2次安倍内閣以降の当初3年間で、国の一般歳出の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、うち社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていることを踏まえて、その基調を2018年度まで継続させていくこととした。これらの金額(一般歳出で1.6兆円、社会保障関係費で1.5兆円)は、「歳出改革の目安」と呼ばれた。

「3年間で1.5兆円増」の目安は守るが…

「歳出改革の目安」は、2020年度の国と地方の基礎的財政収支黒字化という、財政健全化目標の達成を目指すために設けられた。特に、社会保障関係費の実質的な増加を「3年間で1.5兆円」とすることが、2016~2018年度の予算編成で主要な攻防となっていた。この「3年間で1.5兆円」は、「自然増を年5000億円に抑える」とも解釈されていた。

そして、昨年末に閣議決定された2018年度予算政府案では、その歳出改革の目安を達成することができた。与党内ではいろいろな意見が出されたものの、最終的には安倍内閣として”目安を守る”ことで、規律を維持したのである。

ただし、歳出改革の目安は達成したものの、2016年6月に消費税率の10%への引き上げを2019年10月へ延期すると決めたことと、2017年9月に2019年10月の消費増税時に使途を変更し歳出を拡大すると安倍晋三首相が表明したことによって、2020年度の基礎的財政収支黒字化は達成が困難となってしまった。

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