そのLRTは本当に「次世代型」路面電車なのか 新型車両導入より運賃収受方法の改革が必要

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LRTという呼び名はアメリカで生まれた。ヨーロッパ諸国の路面電車活用に触発されたアメリカが1970年代の初めに新しい路面電車の開発を始めた。

ロサンゼルスとロングビーチを走るLRT(筆者撮影)

時代遅れの乗り物とのレッテルが貼られた従来の路面電車やインターアーバン(1910年代を中心に活躍した市街地は路面電車のように併用軌道を走り、市街地を抜けると専用軌道を高速運転する都市間電車。全長15~20mの車両の3~5両連結で輸送力は大きい)の最新版であることを強調するために、それをLight Rail Transit(略してLRT)と呼ぶことにしたのである。

それゆえに、LRTはインターアーバンを近代化したものと定義されるが、近代化された路面電車もLRTと呼ぶのが一般的である。しかし、近代的な路面電車でも従来どおりにフランスではトラムと呼び、アメリカでもサンディエゴではトロリーと言う。

いずれにしても、LRTとは新しい路面電車のことである。しかし、わが国にとってLRTとは新しい路面電車なのだろうか。

運賃収受に時間がかかりすぎ

わが国の路面電車の利便性と機能は、諸外国で走っている路面電車のそれに遠く及ばない。

第1にバリアフリーではないこと。低床車が投入され、あるいは、ホームがかさ上げされて乗り降りはバリアフリーという例はあるが、乗車扉と降車扉が区分けされているから車内移動が必要であり、全長27mの路面電車もあり最後部に乗車すると降車時には20mあまりも車内を移動する必要がある。ベビーカーや車いす利用者には使い勝手がよくない。これでは、「人にやさしい」とは言えない。

第2に運賃収受に時間がかかること。運転士の監視のもとに乗客一人ずつ順番に運賃を運賃箱に投入、あるいは、ICカードをタッチするから時間がかかり、停車時分が長くなって表定速度が低い。

第3にこうした運賃収受方式のために小型車両しか使用できず、バスに代替できる程度の輸送力しか得られない。これでは路面電車を導入する積極的な理由にならない。輸送力が小さいためにパーク・アンド・ライドやバス・アンド・ライドに対応できない。大型車両が必要な場合には車掌の乗務が必要になる。

「次世代型路面電車でまちづくり」を謳う都市は、その説明にヨーロッパの路面電車の写真を添えている。宇都宮市も同じで、宇都宮駅東口の大看板にも市のウェブサイトにもストラスブールの最新形車両の写真を使っている。

次世代型路面電車とは、こうしたヨーロッパで走っている路面電車を指すのだろうか。確かにわが国の路面電車の現状の水準からすれば、まさに「次世代型」である。ヨーロッパの都市で普通に走っている路面電車を次世代型と呼ばざるを得ないのは情けない話だが。

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