リニア新幹線「2027年開業」が難しすぎる理由 開業遅れると全国のプロジェクトが大混乱?

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何が起こるか分からない状況を予兆するかのように、昨年12月、リニアの沿線自治体である長野県中川村にて山の斜面が崩壊、流入した土砂が県道を塞ぐ事故があった。その後の記者会見にてJR東海は「現場近くで行われていたリニアのトンネル工事での発破作業」が事故を招いた可能性があると認めた。発破に伴う振動で地盤が緩んだ可能性があるという。出足からトラブルに遭った格好だ。

無事にトンネル工事が竣工しても、すぐにリニアが走るわけではない。2026年11月までの工事に含まれるのは「トンネルの開通のみ」(JR東海)で、リニアの線路ともいうべきガイドウェイの敷設はそこから新たに行うからだ。

ガイドウェイ敷設にはどれくらいの期間がかかるのか。1997年から走行実験が行われ、リニア開通後には本線としても使用される山梨実験線が参考になる。同実験線のガイドウェイ延伸を担当した鉄道建設・運輸施設整備支援機構によれば、全長24.4kmのガイドウェイの敷設工事にかかった期間は2011年3月から2013年1月まで。2年弱もの期間を要している。

新技術の試運転に「たった1年弱」

一般的に、線路の敷設はトンネルや高架橋といった土台の工事が完了してから始まる。だがリニアの場合、トンネル工事の竣工を気長に待っている時間はない。すると、トンネル開通を待たずして、掘った区間から順次ガイドウェイを敷設していくという「荒技」しかないが、狭いトンネルの中で掘削と敷設という異なる工事を互いに干渉させず進めるのは至難の業だ。JR東海はガイドウェイ工事については「時期、事業者ともに未定」としている。

ガイドウェイの敷設が完了すると、ようやくリニア車両が走れるようになる。だが、いきなり乗客を乗せて走ることはなく、一定期間にわたり試験走行を行う。

これまで開通した新幹線を例にとると、2016年3月に開業した北海道新幹線の新青森―新函館北斗間では、1年以上前の2014年12月から試験走行を開始している。15年3月に開通した北陸新幹線の長野―黒部宇奈月間でも2013年12月から試験走行を始めているなど、最低でも1年間は試験走行を行うのが通例だ。

だが、これは走行実績が豊富な新幹線の話。前例のない新技術ではより入念な試験が必要だ。昨年12月にデビューした特急「スーパーあずさ」の新型車両E353系の試験走行は、何と投入から2年半も前の2015年8月から始まっている。車両に導入した技術が走行区間にマッチするかどうかの確認に時間を要した。走行方式そのものが新技術のリニアにとっては、より慎重な試験走行が必要だろう。

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