国枝慎吾世界一の裏に丸山流「コーチング術」 車いすテニスのジュニア選手向けイベントも

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その一環として2017年12月、ようやく実現したのが「車いすテニスジュニアチャレンジキャンプ」(13〜15日/静岡県掛川市のつま恋リゾート彩の郷)と題したジュニア世代対象の合宿だった。

キャンプには丸山が全国から招集した小学4年生から高校3年生までの男女12人が参加。中には国内ジュニアランク1位の選手もいるが、選抜基準は現時点での競技力や競技歴だけでなく、車いすテニスが好きという気持ちややる気、会話をした時の反応の良さなどを丸山は重視する。

全国から選手が集まった(筆者撮影)

皆、先天的・後天的に障がいのある子どもたちで、どの子にも父親か母親が付き添っているが、これにはわが子の介助以外に、親にも競技への理解と応援を仰ぐ意味がある。

子どもたちが一番に学ぶ「考えるチカラ」

3日間にわたるキャンプは朝8時45分(初日は朝9時)から夜9時(最終日は8時15分)までスケジュールがびっしりだ。基本プログラムは技術練習とフィットネス指導、各種セミナーの3本柱。指導にあたる9人のコーチの中には世界王者の国枝や世界ランカーの三木ら現役選手が4人もいる。とりわけ国枝はジュニアたちの憧れの存在とあって、子どもたちのモチベーションは大いに高まった。

そんな豪華なプログラムの中で丸山が一番に伝えたのは、自分で考え行動するチカラだ。例えば練習で、深い所にボールを打つよう指示すると、子どもたちは弾道を上げベースライン近くにボールを落とす。だがそこで、「どうしてそういうふうに打ったのか、なぜ弾道を上げると深く打てるのかを尋ねると、十中八九、答えられない」と丸山。

「結局、本質がわからないまま技術だけマスターしている。これは指導者の責任で、選手にはまず自分で考えるチカラを身につけさせなくてはならない。そうでないと練習で打てるボールも試合では打てなくなってしまいます」と言う。

だから丸山はアドバイスの時、決して答えを言わずヒントを与えたり、選手との会話の中で本人から答えを引き出したりしていく。想像以上に根気の要る作業だが、それが指導者の仕事であり「コーチング」だと丸山。何でも教えるだけの「ティーチング」では真の実力は育たないと主張する。

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