北朝鮮は制裁下でもインフレになっていない 4年滞在したスイス援助機関職員がみた現実

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報道によると、北朝鮮は燃料不足の中、公海上で船同士で積み荷の石油精製品を移し替えていたとされる(写真:フィスラー氏提供)
北朝鮮関連の専門ニュースサイト、NKニュースが1月10日、スイス開発協力庁(SDC)の平壌事務所に4年間務めたトーマス・フィスラー氏のインタビュー記事を掲載した。日本の読者にも有益と思われる貴重な北朝鮮の国内情報が満載だ。NKニュースの許可を得て、筆者が翻訳のうえ、2回にわけて東洋経済オンラインに掲載する。本記事は、その後編である(前編はこちら)。
なお、同氏は見たまま聞いたままの北朝鮮の実情を率直に伝えていると思われるが、度重なる核ミサイル実験で国連などの制裁下にある北朝鮮への批判が手ぬるいとの見方も一部で出るかもしれない。本インタビューへの判断は読者に委ねたい。

NKニュース:コメをはじめとするコモディティ商品の価格はどうですか。変化はありましたか。

板門店で記念撮影するスイス開発協力庁(SDC)勤務中のトーマス・フィスラー氏(写真:フィスラー氏提供)

フィスラー:私の見解では、インフレーションは起きていません。私が得ている情報では、コメ1キロは少なくとも平壌ではだいたい8000ウォンほどで推移しています。コメ1キロはここ数年4000ウォン程度で推移しているとの指摘も承知していますが、場所によってコメの価格は違うのかもしれません。

為替レートも、とても安定しています。ですので、燃料価格の上昇は起きていないし、昨今の制裁でインフレも誘発されてもいません。トランプ米大統領が言った、「(ガソリンスタンドでは)車が長い列をなしている」との声明はまったくのフェイクニュースです。事実ではありません。

重要なことは、経済制裁にもかかわらず、コモディティ商品の基本的な価格に変化がなく、インフレーションも見られないということです。

100ドル札や100ユーロ札を何枚も持っている

NKニュース:北朝鮮の公式給与水準は、月約30ドルから40ドルと言われています。北朝鮮国内でこれらの資金はどこから来ているのでしょうか。

フィスラー:誰もが、私が呼ぶところの、ある種の「収入を生み出す活動」にかかわっています。

私は常々、人々が財布を開け、100ドル札や100ユーロ札を何枚も持っていることを見て驚いてきました。決して裕福とは思えない人も、持っていました。

もちろんスパに行くような大変裕福な人々を目にすることがあります。しかし、彼らは違ったレベルにいる人々です。

財力を判断できる興味深い一例として、ぜいたく品を販売するスーパーマーケットや市場の数を挙げることができます。

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