フェラーリ「F430」今でも買える名車の魅力 2004年登場モデルだがなお色褪せない

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長いミッドシップV8フェラーリの歴史の中で、今回特にこのモデルをチョイスしたのにはもちろん理由がある。それは、ステアリングホイール上に置かれるスイッチでモード選択が可能なスタビリティ・コントロール・システム(ESC)、つまりスピン防止装置がこのモデルから搭載されるからだ。

限界的な走行シーンにおいて、車両がスピンモードに入る、あるいは極端なアンダーステア(ハンドルを切っても曲がらない)が生じた場合に、エンジンの出力を調整するだけでなく各ホイールに備わるブレーキを電子制御でかけて車両を安定させる仕組みで、自動車の安全技術や法制について研究する公的機関として世界で最も大規模なもののひとつであるIIHS(米国道路安全保険協会)の調べによると、一般的にその装着により自動車の単独事故の5割以上が削減できるという。

スポーツカーをESCなしに制御できるのは…

「本格的なスポーツカーにそうした電子デバイスは必要ないのでは?」という論調も昔から存在する。しかし、すべてが自己責任で、速く走ることが目的のサーキット走行に限ればそうかもしれないが、一般公道上では不意な他者の飛び出しや路面の不整といった予期せぬ事態がしばしば訪れるし、私の経験からすると300馬力以上の最高出力を発し、このF430のようにリアが285mm幅という強力なタイヤグリップを備えるスポーツカーを、ESCなしに制御できるのは相当熟練したドライバーに限られると思うのだ。

ステアリングホイール

そして、整備が行き届いたクルマであれば、4段階に調整できるF430のESCはまったくスポーツ・ドライビングの邪魔にはならない。前に説明したE-Diffや、走行モードによっても調整される電子制御ショックアブソーバーの効果もあって、つねに遠慮なくアクセルペダルを踏みつけて刺激的なV8エンジンを味わうことができるのだ。

絶対的な加速性能では最高出力670馬力の現役世代である「488GTB」に及ばないのは性能データから明らかながら、ペダルの動きに対する俊敏さや超高回転域のスムーズさ、そして濁りのないサウンドは、もしかしたら自然吸気エンジンのF430のほうが上を行くかもしれない。強烈な加速Gを身体で感じながら、まるで最高級の金管楽器を操っているかのような金属的な振動音が、F1ギアボックスの鋭い変速のたびに繰り返される様は痛快と表現するに尽きる。

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