平壌の住民は、あらゆる物を入手できている スイス援助機関職員がみた「北朝鮮の現実」

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地方での軍属労働者たち(写真:フィスラー氏提供)
北朝鮮関連の専門ニュースサイト、NKニュースが1月10日、スイス開発協力庁(SDC)の平壌事務所に4年間務めたトーマス・フィスラー氏のインタビュー記事を掲載した。日本の読者にも有益と思われる貴重な北朝鮮の国内情報が満載だ。NKニュースの許可を得て、筆者が翻訳のうえ、2回に分けて東洋経済オンラインに掲載する。本記事はその前編である(後編はこちら)。
なお、同氏は見たまま聞いたままの北朝鮮の実情を率直に伝えていると思われるが、度重なる核ミサイル実験で国連などの制裁下にある北朝鮮への批判が手ぬるいという見方も一部で出るかもしれない。本インタビューへの判断は読者に委ねたい。

平壌の住民は、あらゆる物を入手できている

SDCのトーマス・フィスラー氏は昨年10月、北朝鮮での勤務を終えた。同氏の体験は、北朝鮮を訪れたことのあるほかの多くの外国人と大きく違い、北朝鮮についての非常に多くの識見を与えてくれる。

当記事は、NKニュースからの翻訳記事です

フィスラー氏の北朝鮮赴任は、駐在員の一般的な基準からみれば、かなり長いものだった。多くの駐在員はわずか2年で赴任を終えているからだ。さらに、同氏はSDC協力局長として、ほとんどの外交官が訪れたことのない北朝鮮の遠隔地にも定期的に足を運ぶことができた。

フィスラー氏は昨年12月、NKニュースとのインタビューで、北朝鮮の都市部と地方との違いや経済制裁の影響、人道支援という政治化した問題、さらには多くの北朝鮮ウォッチャーが長年、頭を悩ませてきた国内経済について、多くのことを語ってくれた。

板門店で記念撮影するスイス開発協力庁(SDC)勤務中のトーマス・フィスラー氏(写真:フィスラー氏提供)

注目すべきことに、フィスラー氏は、北朝鮮の人々が首都平壌でも地方でも、配給と公的給与を補うために「収入を生み出す活動」をしていたと述べた。結果として、平壌では高級な冷蔵庫、地方の田舎町ではソーラーパネルという具合に、地元の住民がほしい物を入手できていると述べた。

しかし、フィスラー氏は「地方ではいまだに多大な人道的支援が必要となっている」と指摘し、現在の国際的な支援水準は住民1人当たり年2ドルにとどまっていると述べた。同氏によると、この支援額は、北朝鮮政府が住民に十分に支給したいと望んでいる必要水準には全然足りていない。たとえ同国の核開発計画がなくても、同じだという。

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