日東電工はなぜトップシェア製品が多いのか 柳楽幸雄社長に独自戦略を聞く

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――グローバルニッチトップ戦略を掲げています。改めてどういう意味合いですか。

グローバルニッチトップ戦略の「ニッチ」の意味は、一つは変化して成長している市場に行くということ。それから差別化技術があるか、優位性を発揮できるかということ。これらの条件に当てはまる製品を、われわれはニッチ製品と呼んでいる。一般的な「すき間」という意味合いとは異なる。

日東電工が手掛けるからには、うちらしい差別化要素、優位性がないとダメだ。その優位性はお客さんと接触して決める。たとえば経皮吸収型テープ剤という製品がある。これは粘着剤の中に薬を入れられないかという顧客の要望から生まれた。

つまり差別化というのは技術の問題だけではない。お客さんが困っているときに、どうすれば喜んでもらえるか、その姿勢のようなものだ。その姿勢を積み重ねることが、差別化につながっていく。

だからこそ、われわれはシェアトップを狙っている。シェアトップになれば、最初に顧客に相談される存在になれる。そうすれば新製品開発に向けた情報なども多く入ってくる。

第二ステージは「エリアニッチトップ」

――現在ではグローバルニッチトップ戦略に続き、エリアニッチトップの旗も掲げています。

エリアニッチトップ戦略は、グローバルニッチトップを第1ステージとすると、第2ステージの戦略だ。第1ステージでは顧客は日本人中心だった。日本でシェアトップになって、海外に出ていけばシェアトップになれた。しかしこれからは、それでは勝てない。まず需要がある世界の各エリアで、シェア1位を狙う。そこからグローバルシェアを高めていく。勝ち方は変わってきている。

 ――1万3500に上る製品群の多さも特徴です。

われわれは経営の「多軸化」を進めている。将来の収益柱の種を探すため、事業部門では将来性が薄いと判断されても、経営陣の判断で投資できる「多軸ファンド」も設定した。その狙いは、集中と選択をあえてしないいうことだ。新しいことはどんどんやろうと。そうしないと、ニッチトップ製品など生まれてこない。製品化につながるのは3割で十分だといっている。大事なのは片足を出すこと。そのとき上司は片目をつぶれと。それが日東電工の文化なんです。

(撮影:ヒラオカスタジオ)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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