「フード産業」を人気業種にすることは可能か クックビズが目指していることとは?

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藪ノ:そこで、どうやって収益性を高めていくか考えて取り組んだのが分業制でした。人材紹介のビジネスモデルは、コンサルタントが一気通貫で、企業側の対応も求職者の対応もするのが一般的です。クックビズではそうした工程を4つの職種に分割しました。まず応募があったら本社のコールセンターで一括して連絡を受け、全国の応募者に架電をして面談の設定を行います。面談をするのはコンサルタントで、コンサルタントは応募承諾を取るまでが仕事です。そこから営業に渡して営業が企業側の対応をします。コンサルタントと営業には、それぞれアシスタントを付けて事務方の仕事を処理します。

この4職種に分けることで成約数を上げて行こうというのが狙いでした。ホワイトカラーの人材紹介の場合、コンサルタント1人が月に2~3人くらい成約するんですが、われわれは平均成約数をその3倍くらいに上げました。分業化して一人あたりの成約数を最大化することで、ナレッジが溜まりやすくなり、それが後から採用した人の育成の早期化にもつながります。こういった、色々な掛け算によって、ここ2年くらいで収益が大きく出たということだと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上): KPIを細かく分解して収益モデルをつくって経営されてきたということですね。結果的に当時の想定を超えて成長されてきたと思いますが、その実現の原動力となったKPIはなんだったのでしょうか?

藪ノ:一番想定より伸びたのは単価ですね。人手不足で年収も紹介料も上げないと人が採れなくなったんです。クックビズからの紹介実績が積み上がり、顧客の信頼を得たことに加え、市況が追い風となりました。結果、ホワイトカラーと遜色のない紹介料率にまで引き上げられたことが、利益に繋がっています。

村上:外部環境の後押しもあっての伸びだったんですね。飲食という人材サービスでは未開拓の市場だったからこそ、紹介料率を引き上げるチャンスが潜んでいたということですね。コンサルタント当たりの経験件数を引き上げたことで、コンサルタントのクオリティも向上し、クックビズの評判とともに収益率が上がるという好循環が生まれたんですね。

藪ノ:われわれは、市場の単価が上がる前に参入して、トップシェアを取れていたので、「飲食の人材紹介ならクックビズでしょ」という評判は得られていました。競合もいたんですが、彼らはシステムに投資せず、いずれ売り上げも頭打ちになったと聞いているので、われわれはシステム投資をしたことで再現性が上がったことが競争優位になったんだと思います。コンサルタントが入ったら何カ月でこれくらいの売り上げが立つっていうのがほぼ読めているので、非常に精緻な予算が立てられるんです。

”飲食人”の志向に寄り添う、リアルな情報提供

朝倉:御社の「成長可能性に関する説明資料」にも外食産業の規模は盛り上がりつつあるとあります。このビジネスは単価にしても流動性にしても外食産業の市場に左右されると思いますが、実際はどの程度影響を受けるものなんですか?

外食産業の規模は盛り上がりつつある(図:クックビズ)
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