「フード産業」を人気業種にすることは可能か クックビズが目指していることとは?

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藪ノ:飲食業界では求人企業にも採用ノウハウがなく、また求職者にも転職ノウハウがありませんでした。面接の冒頭でいきなり「いつから出勤できますか?」といった会話が交わされるような状況だったんです。職務経歴書を書くというような、ホワイトカラーの転職市場では当たり前の転職の作法も知られていなかったので、まずはそういった作法を伝えることから始め、コンサルティングを行ってきました。この10年間、不満足な転職・採用を減らすことがわれわれの介在価値だという考えに基づいて、経営をしてきました。売り上げで言うと、全体の6割強を基幹ビジネスである人材紹介が占めており、それ以外に求人サイトも運営しています。紹介と情報サイトの両方をやっているのがわれわれの特徴だといえます。

藪ノ賢次(やぶの けんじ)/大阪府出身。2004年大阪府立大学工学部卒業後、すぐに起業。2007年クックビズ株式会社を設立。「フード産業を人気業種にする」をビジョンに、飲食店とそこで働く人材のミスマッチを無くすため採用活動・転職活動を支援する人材サービスを行う。また、飲食人材のプロによる『食』のキュレーションサイト「クックビズ総研」、飲食のプロをつなぐ「食」のSNSアプリ「Foodion」を運営。多角的な方面からサポートを行う(写真:Signifiant)

ホワイトカラーが利用するような転職エージェントは人材バンクを持っているわけですが、そこに飲食業界のデータはなかったので、自分たちで求人サイトをつくって応募者を募り、応募してきた人たちのデータを集積することで、われわれオリジナルのデータベースをつくっていきました。そうすることで、企業が求職者を直接スカウトする機能も提供できるようになったのです。

朝倉:大学を出られて比較的早い段階で起業されていますが、昔から起業熱のようなものをお持ちだったんですか?

藪ノ:そうですね。父親が兄弟で20人くらいの町工場をずっとやっていて、自営業の一家で育ったこともあり、卒業後の進路を就職に限定する感覚はなかったですね。大学を卒業して1年くらいフリーターをしていたのですが、やっぱり起業かなと思い、まず有限会社を作ってECサイトや携帯電話の代理店などいくつかの事業をやってみたんですが、どれも面白くなくて、たどり着いたのがクックビズだったんです。

収益性の高いビジネスモデルへの進化

朝倉:初期は関西中心に事業を展開されていったと思うんですが、そこから地域を拡大していこうと思ったのはいつのタイミングだったんですか?

藪ノ:2012年が一番の転機でしたね。地域拡大という意味では、2012年11月に恵比寿に拠点を出しました。2012年には、他にも、求人広告事業の立ち上げも行い、求人サイトのフルリニューアルも行い、ジャフコからのファイナンスを入れ……、と、多くの出来事がありました。その時に打った施策が5年くらい経って花開いたという感覚があります。

朝倉:目論見書を見ると、2012年と2013年の11月期は赤字がギリギリないくらいの範囲内で推移していますが、翌年に大きく赤字を掘って、その翌年からぐぐっと成長しています。このときはどのような状況だったんですか?

藪ノ:新規事業も展開していたし、そのタイミングで人が爆発的に増えたというのもありましたが、利益が出にくい体質だったというのも事実です。人材ビジネスは手数料で売り上げを立てているわけですが、年収が高ければ手数料率も高くでき、手数料も多くなります。しかし飲食業界は年収も低くて手数料率も高くしづらかったので、平均の紹介単価は50万円程度でした。通常のホワイトカラー転職の場合、紹介手数料は200~300万円になると思うので、その水準からするとわれわれの手元に入る手数料は4分の1くらいでした。

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