北朝鮮と対話できると思っている韓国の末路 「オリンピック停戦」はいつまで続くか

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3つの停戦の中でも、世界的に関心が高いのは南北停戦がいつまで続くかだろう。ほとんどの米国のアナリスト、そして対話の努力を支持している人たちでさえ、停戦が長く続くとは思っていないのが現状だ。CFRのスナイダー氏は「今恐れているのは、これは一時的な緊張緩和であり、4月には今までの対立への軌道に戻ることだ」と語る。

停戦がオリンピック中すら続かないという懸念も浮上している。実際、北朝鮮はオリンピック終了後、合同軍事演習が再開されるとの発表を即座に非難した。しかし、文政権と北朝鮮政策に関する顧問は、今回の停戦が高官レベルの会談につながる突破口になるとの期待を捨てていない。彼らは、対話を米朝間交渉の間接的なルートとみなし、これが単に韓国とその同盟国を仲たがいさせるという北朝鮮の試みであるとの考えを否定している。

突っ走る文大統領に韓国の国民は

「オリンピック中の北朝鮮との高官レベルの会談の中で、文大統領は『成果』を得ようとするだろう。そしてそれは、米朝間および南北間のよりよい会談の機会につながる可能性もある」と、世宗研究所で北朝鮮問題を専門とする白鶴淳(ペク・ハクスン)氏は語る。「もし何も成果が得られなければ、文大統領は米国に朝鮮半島で新たな進展の機会を与えることを促せないかもしれない。だとすれば、文大統領は春の軍事演習の中止や開城工業団地の再開を求めないだろう」。

オリンピック停戦を真剣な交渉に導こうという文大統領だが、その望みは薄そうだ。米国との決裂懸念があるほか、国民もこれに対しては厳しい目を向けている。実際、世論調査会社リアルメーターが1月25日に発表したところによると、文大統領の支持率は前週比6.2ポイント低下し、59.8%と昨年5月の政権発足以来、初めて60%を下回った。

北朝鮮側は、制裁解除と外部からの圧力緩和の両面で、この停戦から何かしらを得ようとするかもしれない。しかし一方で、深刻な緊張関係の再開に備え、両面作戦をとるのは明らかだ。その二重のアプローチの最もわかりやすい例は、オリンピック開幕の前日、2月8日に大規模な軍事パレードを開催するという決定である。

停戦が崩壊すれば、北朝鮮との真剣な対立に至る道へと戻り、最終的な結末が世界の軌道を変える可能性がある。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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