北朝鮮と対話できると思っている韓国の末路 「オリンピック停戦」はいつまで続くか

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こういった恐れは、北朝鮮政府への外交の扉を開き始める動きへとつながった。さらにはオリンピックを平和に成功させたいという希望もある。金正恩朝鮮労働党委員長は、その思いを利用し、韓国と米国の間に亀裂を生じさせ、北朝鮮の経済に影響を与える制裁に風穴を開けたいと考え、新年の演説でその開かれた扉を通った。

ペンス副大統領の上級補佐官が先週、記者団に語ったことによると、ペンス副大統領はイベントを「ハイジャック」しようとする北朝鮮の対抗宣伝を迎え撃つためにオリンピックに行くという。最近のハワイでの米韓国防大臣の会合で示されたように、米国の政府高官たちは、韓国と統一したアプローチを示し続けている。 しかし、この協調の現実性に対し懐疑的な見方もある。

トランプ大統領のほうが「恐い」

米国務省の元朝鮮部長で、ソウルにある有力な世宗研究所の研究員デイヴィッド・ストラウブ氏はこう語る。「文大統領はすでに結束を乱している。われわれは違いを覆い隠し、違いなど存在しないと主張している」。

しかし、ストラウブ氏は、北朝鮮がチャンスを与えるならば文大統領は対話に熱心に取り組み、制裁を緩和する可能性を懸念している。北朝鮮の開城市にある工業団地や、そのほかの共同プロジェクトを再開する計画や、延期された米韓合同軍事演習の規模を縮小する対応策もある。「国内政治と国際情勢の状況が許せば、文大統領はすぐさま飛びつくだろう」(ストラウブ氏)

米国には、南北対話とオリンピックの停戦を支持する政策立案者たちもいる。トランプの不安定なリーダーシップにより大きな危機感を抱いていることがこの背景にはある。

権威ある外交問題評議会(CFR)の韓国専門家のトップであるスコット・スナイダー氏は、「韓国が対話チャンネルを築くことにあらゆる努力をすることを支持する。これまでのところ、米韓同盟分裂に対する大きな脅威はない。文大統領は今までのところは現実主義者であり、それが変わらないかぎり、米国の『心変わり』のほうがより大きな脅威だ」と同氏は話す。

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