外国人が活躍できない日本の残念な労働事情 労働者と移民は分けて考えるのが現実的だ

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――自動車産業の系列企業のように、大手企業を黒子役の下請け企業が陰ながら支えるという構図は、日本では少なくありません。

私たちのマッチングサービスに求人情報を出して下さる企業にも、そういう黒子的存在があります。たとえばウェディング産業。最近はハウスウェディング(ゲストハウスを貸し切って行う結婚式のスタイル)が人気で、ウェディングそのものは専門の企画会社が手がけています。

でもひとつのウェディング会場で1日3回も素敵なパーティーが開ける現実の裏側には、ウェディング会場に特化した皿洗いの専門業者といった企業があるのです。そういう企業ではすでに外国人労働者が働いています。日本語がそんなにできなくても問題がないし、一生懸命頑張ってやってくれるということで。パーティーに来た人の目に触れることはないけれど、ウェディングも外国人の働き手によって支えられているのです。

ウェディングにとどまらず、ロングテールというのか、すごく幅広いビジネスから外国人が求められています。このことに、私たち自身も驚いています。たとえば温泉掘削業界。掘削そのものは資格が必要なのですが、補助作業をしてくれる人が足りないそうで、そこに外国人が求められています。ほかにはチラシのポスティング。確かに今でも、チラシっていっぱいポストに入っていますよね。本当にニーズがいろいろあるなと、身にしみて感じ始めています。

ただ残念ながら、外国人「が」いいと思って求人を出している企業というのは少ないのではないでしょうか。日本人の若者はどうしても応募してくれない。高齢者も主婦もいまひとつ採用に結びつかない。そういう中で、消極的に外国人を選択している企業が多いのでは。

この点、シンガポールは違っています。建設現場は体の強いバングラデシュ人が向いている。造船や看護だったらフィリピン人、というふうに、各国の人材の強みを重視しています。

外国人「でも・しか」の発想。

――造船はフィリピン人なんですか。

国策として、溶接工を育成しているといった理由があって、溶接工の有名な学校もあるんです。

そしてシンガポールではこういった仕事をする人を、スキルド・ワーカーと呼んでます。会計士や弁護士のような頭脳労働ではなくても、スキルが必要なのは変わらない。その考え方に立って、「外国人は嫌だけど仕方がないなあ」ではなく、より強いスキルを持った人を選んでいます。

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