トヨタが燃料電池自動車をあきらめないワケ 2020年頃メド「MIRAI」の次期型車を発売へ

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トヨタが2017年の東京モーターショ-で公表した燃料電池バスのコンセプトモデル「SORA」。市販型は今年発売を計画する。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、100台以上が導入される予定(撮影:鈴木紳平)

昨年12月、トヨタは2025年頃までにエンジン車だけの車種をゼロにする「電動車普及に向けたチャレンジ」を公表。世界で販売する全車種をEVやHV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCVなど電動専用車もしくは電動車を選べるようにする方針を示した。電動車両は2030年に全販売台数の半分以上の年間550万台以上、うちEVとFCVについては合わせて100万台以上の販売を目指している。

EVではトヨタは欧米勢に比べて出遅れていたが、ここに来て取り組みが本格化している(「HV王者のトヨタがEVにアクセル踏み込む理由」)。昨年はパナソニックと車載電池開発での提携や、マツダ、デンソーとEV開発での新会社設立などを矢継ぎ早に打ち出した。その一方、本家でもあるFCVの話題が出ることは少なかった。

車の電動化に全方位戦略で挑む

ただ豊田章男社長は今年1月の業界団体の賀詞交換会で「トヨタは電動化フルラインナップメーカー」と断言。「何を選ぶかはそれぞれの国の事情で変わる。お客様がどれを選ぶのかはっきりするまで、全方位で戦う」と話す。EV戦略を加速しつつ、優先してきたFCVへの投資も継続する考えだ。

トヨタのFCV「ミライ」が搭載する燃料電池スタック。次期型車開発では、車両価格引き下げに向け、燃料電池システムのコスト低減が課題だ(編集部撮影)

トヨタがパワートレインで全方位戦略を取り続けるのは、EVとFCVそれぞれにメリットとデメリットがあるからだ。EVは1回の充電での航続距離が400~500キロと伸びてきたが、実際にヒーターやクーラーをつけるとそれよりもだいぶ短くなるほか、充電時間が普通充電で約8時間、急速充電でも約30分かかるため、本格的な普及に向けて課題は多い。

他方、FCVは水素燃料の補給時間が1回3分と短く、航続距離も約650キロと長いなどメリットは多いが、価格やインフラ整備はEVより劣る。ミライの車両価格は税込みで723万6000円。国や都道府県などの補助金を受けても、多くの場合、400万円台と高額だ。生産量も限られている。年間生産能力は15年が700台に対して、16年は2000台、17年は3000台と少しずつ上がってきたものの、「スタックの量産化は初めてでなかなか難しい」(トヨタ幹部)としたうえで、「現在は3000台の生産が精いっぱいだが、2020年以降に10倍以上造れる生産技術を開発する」という。

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