「自動運転車」は人なら防げる事故を防げるか コンピュータにも強みと弱みがある

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自動車メーカーとハイテク企業は、NHTSAのやんわりとした要請に応えて、技術的な詳細を少しずつ公開し始めた。昨年10月、米グーグルの自動車開発事業、ウェイモが自社の安全報告を公表したほか、米インテル傘下のモービルアイは「安全な自動運転車両の開発計画とその証明」と銘打ったレポートを発表した。

今月にはGMも、2019年発売を目指す完全自動運転車「クルーズ」の技術的概要を発表。度合いは異なるが、こうした報告は、リスクやエラー、事故の原因、そしてその責任といった問題点に取り組む努力の現れである。

自動運転車の事故責任はどこに

一方、部分自動、あるいは、完全自動運転車がこれまでに起こした事故に対する責任などに対する疑問も浮上している。これまでのところ、最も重大な事故は、2016年5月に起こった米テスラ・モーターズの「モデルS」による死亡事故で、NHTSAと国家運輸安全委員会(NTSB)の両方が、それぞれ独自の事故調査を行った。

NHTSAとNTSBでは、多少異なる目的をもって事故調査に当たった。NHTSAの目的は、「安全にかかわる欠陥が特定されたのか」という疑問へ答えることで、調査ではそうした欠陥は見つからなかった。

一方、NTSBによる衝突事故調査の任務は多少異なり、事故の事実を客観的に究明し、推定される原因を特定することだった。調査では、数多くの落ち度が見つかり、それは「衝突はトラック運転手が車(テスラ)の優先権に対して譲歩しなかったこと、そして、自動運転車への過信による運転手の注意不足が組み合わさった結果、トラックの存在に対する(テスラ)車の運転手の反応が鈍った」というものだった。NTSBは、さらに、運転手が長時間にわたって運転に関与しなくても問題とならない、テスラ製の運転支援システムの設計にも注目した。

こうした自動運転車による事故について、筆者は個人的な見解を持っている。昨年7月、サマーキャンプに参加する子どもを送るため、駐車場を歩いていた際、5歳の息子が突然、走り出した。クモを見つけて興奮したのだ。

いつもは、子どもたちが、道路から離れた場所を歩くようにしているのだが、この時息子は、一目散に駐車場から出ようとしている車の通りの、すぐ手前まで走って行ってしまった。息子を捕まえようとしたが、すでに手が届かない。私にできることといえば、息子と一緒に通りに飛び出して、目の前に迫っていた車を運転する人に身振り手振りで子どもがいることに気がついてもらうことくらいだった。

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