27歳「派遣プログラマー」が貧困に苦しむ事情 月の手取りは10万円、住まいは「脱法ハウス」

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節約のため、普段の食事はシリアルか、チューブ入り味噌をまぶしてお湯をかけた白米という「炭水化物オンリー」。自動販売機の飲料水は割高なので久しく買っていない。

それでも、給料日前には現金がなくなるため、細かな日用品などはクレジットカードで買わざるを得ず、それらは翌月の引き落としとなって家計を圧迫する。貯金はほとんどできない。「休日は食費を浮かすために頑張って寝て過ごすという感じ。今年のお正月も出費を抑えるため、自宅にこもりっきりで過ごしました」。

派遣労働は不安定で、突然収入が途切れることもある。以前、翌月の家賃が払えそうになくなったときにシェアハウスの管理会社に相談したところ、退去するか、管理会社が経営する民泊施設の管理の仕事をするか、どちらかを選ぶよう求められた。

このときは、ホームレスになるよりはと、民泊施設の受付や掃除を引き受け、合間を縫って仕事を探したが、家賃と相殺だからと言われ、事実上のただ働きを強いられたという。

家賃滞納もしていない段階で退去を求めるなど本来は許されない。また、シェアハウスが入っているマンションは築40年を超えており、その地域における家賃相場は9万円前後。家賃3万5000円を5人分徴収すると計17万5000円になり、光熱水費込みとはいえ、相場と比べるとかなり割高だ。シェアハウスは都心部の若者を中心にニーズが高まっているが、これでは敷金、礼金などの初期費用が用意できない非正規労働者らの足元を見た貧困ビジネスと言われても仕方ない。

父親からはバカにされてばかりだった

「自分で転げ落ちた坂ですから。自業自得なんです。なんのために生きているかわからない。1日に1回は地下鉄に飛び込んで死にたいと思います」

あきらめたような口調とは裏腹に、ジュンさんは今日も3分間日記をつづる――。彼の現状は本当に自業自得の結果なのだろうか。

北海道内の地方都市、自営業を営む両親の下で育った。子ども時代は勉強をしても、仕事を手伝っても、特に父親からは「お前、頭、悪いんじゃないか」「効率、悪いやつだな」などと「バカにされてばかりいた」という。要領がよいとは言えない息子と、才覚だけで代々続く家業を切り盛りしてきた父親――。親子の相性はよいとは言えなかった。

専門学校を卒業後、いったんは正社員としてソフトウエアの制作会社に就職したが、2年ほどで辞めた。理由は「入社早々、不具合のあるソフトを作って会社や取引先に迷惑をかけてしまったから」。このとき、先輩社員たちからは「残業代は出るから、もっと会社に残って勉強するように」と命じられたが、一方で深夜まで仕事をしていると「何、無駄なことをやってるの?」などと文句を言われたという。

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