先端グリーンビジネス「植物IoT」とは何か 観葉植物市場の成長余地は大きい

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なおこの植物IoTの具体例は、東京(品川区)と大阪(豊中市)の自社拠点や、演出先の店舗、オフィスなどで見ることができます。その空間には3メートルものアイビーやシュガーパインなどのつる性植物が天井からぶら下がり、「まるで森の中にいるよう」と訪れる女性客に好評です。

そして「アクタス」などの有名ショップから、グリーンコンチネンタルの植物を扱いたい、との依頼もきました。グランフロント大阪の店舗の各所に観葉植物を設置。空調、採光などの条件で枯れてしまうデリケートなものなので、データ管理によるメンテナンスを月額定額で請け負っています。

店舗側は、家具、雑貨とともに観葉植物を置くことで、演出効果が上がり、ライフスタイルを総合的に提案することもできます。観葉植物の売り上げの一部は店舗側にフィーとして還元。双方、ウィンウィンの関係になっています。

このほか、フィットネス大手の東急スポーツオアシス内での森林浴体験、ドローンを使った遠隔監視なども実施。今春には、植物に虫をつきにくくするサービスもクリニック向けに開始します。センサーで温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度、さらに光合成状況を計測し、オゾンなどを使って植物の負担を軽くする仕組みです。植物IoTの可能性が、ますます広がっていくのが感じられる新規事業です。

植物産業の6次化プロジェクトとは何か?

中村社長の口から聞き慣れない言葉が飛び出しました。「植物産業の6次化」です。簡単に言えば、年々増加する耕作放棄地をなんとかしたい、との思いです。「この放棄地、関東で11万ヘクタールあり、関西だけでも2万ヘクタールまで広がっているんです。その土地を使って植物を生産しようというものです」。

労働力は、個人の新規就農希望者を想定し、IoT化した生産温室や空調、電気水道代などの就農インフラを月額定額で提供します。生産された観葉植物は、グリーンコンチネンタルがすべて買い取り保証する仕組みです。それって、温室で作るなら農耕地でなくてもできそうですね、と聞きましたら、「そうなんです。街中の駐車場、空き地、空きビルなどでも有効活用できます。ぜひ土地、物件をご紹介ください」とのことでした。

こうしたすばらしいプロジェクトを次々に推進する中村社長ですが、1つだけ困ったことがありました。取材や講演をお願いしようと連絡しても、なかなかスケジュールが合いません。ただようやくお会いできて事情を聴くとその忙しさは殺人的で、かえってこちらが申し訳なく思うほどでした。新しい仕事の引き合いで引っ張りだこなのもさることながら、中村社長自らトラックを運転して、委託先生産農家に赴き、また納品やメンテンナンスの現場にも立ち会っているそうなんです。

そしてそこに、オーガニックのデザイン、卸販売、メンテナンスさらに物流までもワンストップで引き受ける、という中村社長の気構えを強く感じました。つねに顧客と水際で接すること。この信念があるかぎり、同社は植物IoTの可能性をさらに押し広げていくと思いました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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