37歳、好きな「模型作り」で生きる男の稼ぎ方 中学生から始めた趣味が仕事へと繋がった

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「賞をいただいたのは大変ありがたいんですが、ほかの原型師さんに比べたら全然仕事量少ないほうなので……。依頼仕事をコンスタントにやらないと収入は厳しいですよね。でもそればかりになると、作りたいのを作れなかったりするし。難しいところです。

おカネは儲かるなら儲けたいですけどね。儲からないですよね(笑)。生活できて、活動を続けていける額は稼ぎたいと思っていますけど」

『恐竜のつくりかた』(筆者撮影)

竹内さんは2013年に『恐竜のつくりかた』(グラフィック社 )という本を出版された。児童書なのだが、だからといって子どものためにレベルはまったく落としていない。極めてハイレベルな作品の製作ハウツーが載っている。

「子ども向けに手を抜いて本を作ると、手抜きを見抜いた子どもはついてきません。どうせ作るなら“本気を出した大人が作っている作品”を見せたほうが子どものためになると思いました。本気でやりたいと思ってる子どもたちに『今はできなくても、作ってるオッサンがいるんやったら、いつかは作れるかもしれん』って思ってほしかったんです」

「まだまだ自分の作品には自信がない」

竹内さんは、子どもを対象にした“恐竜を作るワークショップ”で講師を務めることもある。

その時に親御さんや学校の先生から『子どもたちに自信をつけさせたい』と言われることが多いという。

「はじめて恐竜を作ってうまくいくはずなんてないし、それで自信なんてつかないですよ。僕は自信なんてつけなくていいと思うんです。

子どもたちに自信をつけさせるには『お前は才能があるよ!!』ってウソをついて褒めそやすか、『隣の子よりお前のほうが上手だ』って比較すれば手っ取り早いです。そうすれば、確かに自信はつくかもしれない。でも、そんな根拠のない自信は危ういです。自分に実力がないことに気づいた途端に、ガタガタと崩れるような自信です。

ワークショップで恐竜を作って、楽しかったけどうまくいかなかった。だから粘土を買ってもらって家で作ったら、1個目より2個目のほうが少しだけよくできた。そのほんの小さな差が本当の自信になったりすると思うんです。子どもたちには、そういう自信をつけてほしいです」

そんな竹内さんだが、まだまだ自分の作品には自信がないという。

「正直、僕が『この人うまいな!!』と思ってきた人たち、具体的には、竹谷隆之さん(造形作家・シンゴジラなど)や松村しのぶさん(造形作家、チョコエッグ日本の動物コレクションなど)には足元にも及んでいないと思います。

今までは彼らのアウトプットの部分ばかりに追いつこうとしたから、追いつけなかったのかもしれないと最近、思うようになりました。確かに物を作る手先の技術は大事なんですが、でももっと大事なのは物を見ることなんですよね。つまりインプットです。彼らが何をインプットしてきたのかを考え、僕は僕で新たな何かをインプットしていきたいと思っています」

そんなインプットに最適なのは「しろとり動物園」だという。そして竹内しんぜんさんは今日も動物園に足を運び、動物たちを見て、触って、情報をインプットしているのだ。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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