「管理職1年生」が陥りやすい部下育成のワナ できない部下の育成は「メリット」次第

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「管理職1年目」には失敗が付き物です(写真:imtmphoto / iStock)
今年度も残すところ2カ月。そろそろ、4月から新しく管理職になる内示を受けた人もいるかもしれません。ですが、「管理職1年目」には失敗が付き物です。
ビジネスコーチとして多くの管理職研修を手掛けてきた経験をもとに『管理職1年目の教科書』を上梓した櫻田毅氏が、「部下育成のありがちな失敗」を解説します。

新任管理職を対象とした研修などでは、なかなか成果を出すことができない部下(下位人材)をどうすればよいのかという悩みが頻繁に出てきます。管理職としてチームの運営を委ねられたことへの責任感から、時間を割いてでも「できない人」を何とかしてあげようと考えるのは自然の成り行きです。

その一方で、業務能力が高く成果を出している上位人材については、自由にやらせておいても大丈夫だという理由で、ほとんどの方が放置しているようです。現に、仕事が抜群にできる部下のさらなる育成が、研修受講者から課題としてあげられることは皆無と言っていいでしょう。

下位人材の対応には時間を割くが上位人材は放っておく――ここに新任管理職の陥りやすい罠があります。

その部下は「育成」する価値があるか

そもそも、会社が期待する管理職の役割は「チームの成果の最大化」です。プレイヤーの時は、多少後輩の面倒を見ていたとはいえ、基本的には自分個人の成果の最大化が求められていました。それが、管理職としてチーム運営の権限を与えられたのですから、チーム全体の成果を最大化させることに責任を持つのは当然のことです。

『管理職1年目の教科書』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ということは、チーム内の部下の育成方針も、「チームの成果の最大化のためには何を優先させるべきか」という視点で考えるべきなのです。しかし、まだマネジメントに慣れていない新任管理職の方々は、部下の育成が大事だという一般論だけで、気になっている下位人材の育成に条件反射的に時間を割いてしまうのです。

その結果何が起きるのでしょうか? 実は、チームの競争力の弱体化を招く可能性があります。なぜならば、現実のビジネスでは、上位人材の能力の最高到達点がチームの成果を決めることが頻繁に起きるからです。つまり、放置された上位人材の成長が鈍化し、頂点力が弱体化して勝負に勝てなくなるのです。

次ページ「底辺アップ」よりも、「頂点アップ」を図るほうが…
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