体育館に茶室…マンション共用部が凄すぎる 大型化で様変わり、合言葉は「コミュニティ」

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世田谷区からの要請もあり、コミュニティプラザ内には看護・介護事務所や認可保育園も入っている。近隣住民も利用できるが、こうした看護・介護事務所や保育園は、最近の大規模マンションの開発に当たって自治体からお願いベースで併設されるものだ。特段、目新しくもないし、これらがあるから地域との交流が活発化するわけでもない。

コミュニティプラザで開かれるシニア向け教室。この日は「唄体操」がテーマだった(写真:東急不動産)

一工夫したのが、コミュニティプラザの1階に陶芸教室や日本史勉強会といったカルチャースクール的な活動が行えるサロンを、4階に茶釜がしつらえられ茶道教室にも使える和室と、ピアノが据え置かれている音楽室の2つのカルチャールームを設けたことだ。そして外部から講師を呼ぶだけではなく、住民同士でも教室を開催できるような仕組みを盛り込んだ。

シニアにやりがいを提供する

「シニアには生きがい、やりがいが必要」と力説するのは、東急不動産シニア住宅事業部の木田英和係長。高齢者にこれまでの経験を生かす場はなかなかない。たとえば、昔お茶の先生をやっていた人がシニア住宅に入居してきた場合、分譲住宅に住む人にお茶を教える場を提供できればそれだけでも張り合いが出る。分譲住宅の住民にとっても、身近な場所で、しかも割安な料金で稽古事ができれば、お得感は増す。

コミュニティプラザの和室には茶釜が備えられ、茶の湯を楽しめる(写真:東急不動産)

この仕組みはそろりと動き始め、すでにシニア向けにヨガスクールを始めた住民もいる。ブランズシティに住む大町静江さん(仮名)は、老人ホームで介護の仕事もしているため、介護予防の大切さを、身をもって知っている。自身が続けてきたヨガの知識が役に立つのならと、名乗りを上げた。ヨガスクールを始めてから、駅までのシャトルバス内でも声をかけられるようになり、会話が弾むようになったという。

ただ、ブランズシティとグランクレールの間には生活道路が走り、微妙な距離感がある。東急不動産の大隈郁仁社長も「同じ敷地内になければ多世代交流は難しい」と、さらなる改良を進めていく方針のようだ。

マンションの共有部は時代を映す鏡のようなもの。現在ではさまざまな施設が登場している。28日配信予定の記事では、特徴ある施設を持つマンションを紹介していく。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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