埼玉県議会が「原発再稼働」を要望した理由 波紋呼ぶ意見書、仕掛け人の県議に聞く

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――福島原発事故について一言も触れていないとの批判もあります。

われわれは福島にも出向いている。現状はよく分かっている。(福島の皆さんは)大変気の毒だと思う。責任が政府にあるか東電にあるか明確には申し上げられないが、きちんと責任を果たしていかないといけない。

――再生可能エネルギーや火力発電についてはどう考えていますか。

僕自身は、地球温暖化はうそだと思っている。米国のトランプ大統領と同じで。太陽光発電は安定供給につながらない。県による太陽光発電への補助金は間違いだし、計画を潰してきた。電力自由化にも僕は反対している。電力会社による地域独占のほうが正しい。日本人は電力が当たり前に届くと思っていて、安定供給の重要性を分かっていないのではないか。東日本大震災の直後に計画停電があったが、(緻密にできる)あんな素晴らしい技術を持っているのは電力が独占状態だったからだ。自由化が進んだらできなくなる。

――計画停電は韓国や米カリフォルニア州でも実例があるようです。

(東電のように)あんなに一気にはできない、電車の運行をあれだけ緻密にできるのと同じで、日本人はすごい。

核のゴミは「宇宙で処分すればいい」

――原子力をめぐる状況をどうとらえていますか。

60年運転というのは気に入らない。40年で取り壊して新しいプラントを造るべきだ。最初は30年でコスト計算しているのだから、新しいものを建てないとだめですよ。それをやっていたら、福島事故だって起きなかった。高速増殖炉もんじゅはもともと無理なのでもっと早く廃炉を決断してほしかった。(冷却材である)ナトリウムの管理は難しい。

――核燃料サイクルはやめたほうがよいということですか。

いや、それは必要だ。日本はNPT(核不拡散防止条約)加盟の非核兵器国のうちで、唯一、再処理が国際的に認められている。このことは実は安全保障上も重要なことで、いつでも核爆弾を作れますよ、核兵器に転用できますよと言っているに等しい。あまり大っぴらに言う人はいないが、日本は(周辺国による軍事攻撃への)抑止力としてこの権利を手放すべきではない。

――(高速増殖炉実用化のメドが立たないのに)再処理工場を動かした場合、取り出したプルトニウムはどうしますか。当面は(既存の原発で燃やす)プルサーマルで減らしていくべきということですか。

まあそうですね。

――その先はどうするのでしょう。

新しい技術が出てくるのではないか。あまり詳しくはないが、核融合がどうなるかもわからないし。

――使用済み燃料を再処理すると、たくさんの核のゴミが出てきます。

これは私見だが、今後宇宙開発が進むと、宇宙エレベーターが実用化されるのではないか。そうなれば、ロケットを打ち上げなくても、放射性廃棄物を宇宙空間に運んで処理できてしまう。たとえば、太陽に向かって持っていけば、途中で燃え尽きてしまって何の影響もなくなる。それほど難しいことではないと思う。
   

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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