人のつながりを再生する、街のデザイナー 新世代リーダー 山崎亮 コミュニティデザイナー

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「形のないデザインもありえるのではないかと、半信半疑で自分をなぐさめながらやってきた。あ、これで行けるかも、と思った」と山崎さんは振り返る。

現在は、ひと月の5分の4が出張という忙しさで全国を飛び回っている。studio-Lのスタッフも、毎晩遅くまで働いている。かといって、1件の仕事は500万円から3000万円ぐらいの規模だから、莫大な利益が上がるわけではない。それでも仕事に熱中するのは、バスケットボールのサークルと同様、目に見えない報酬があるからだ。

「今月の営業のノルマを達成して表彰されるのもひとつの働き方ですが、地域の人たちとワークショップをして、知らなかったことを知り、夜は一緒に食事をして、温泉に連れていってもらう。毎日楽しい。地域が元気になると、あんたらが来てくれて助かった、ありがとうと言ってもらえる。忙しいけど、精神衛生上、すごくいい」

自分たちが行くことで、住民が新しい会議の進め方、アイデアの出し方を知り、今までうまくいかなかったまちづくり、地域の活性化が動き出す。それが何よりの栄養分だと言う。

中には、前に手掛けたものと似ている案件もある。でも山崎さんは、一つひとつ、新しい解決策を考える。「あの事例がよかったから、同じようなことをやってほしいと頼まれても、デザイナーの性なのか、違うことをやりたくなる。効率は悪いけれど、毎回違うソリューションを出したいと思ってしまう」

それは、現場の状況にきめ細かく対応する、ということでもある。ワークショップに集まってくるメンバーは地域によって異なる。女性が強い地域なのか男性が強いのか、リーダーシップをとろうとする人がいるのか、いないのか、やる気のある人がひとりもいないところもある。

「毎回、頭を悩ませている。ひたすらダイヤグラムを書いて、どの人たちがどう組んで何をすればいいのか、デザインを考える。ヒットする解決策が思い浮かんだときは、事務所で奇声を発しています」

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