韓国と中国の「犬を食べる文化」は悪なのか 犬肉料理を振る舞う地域を実際に回ってみた

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今年も犬肉祭り自体は開催されるという。

丸焼きになった犬肉(筆者撮影)

犬肉祭りといっても、お神輿を担いだり、踊りを踊ったりするような祭りではなかった。日本でいう土用の丑の日にうなぎを食べるのに近い習慣だ。街にある、犬肉料理店がのきなみにぎわうという。ただ現地の人には、

「でも私たちは普段から犬肉を食べますよ。ちなみに私は2週間に1度は食べています。まったく珍しいことではありません」

と言われた。2週間に1度食べるなら、日本人がうなぎを食べる頻度よりも多いだろう。

ガイドに玉林市でいちばん有名だと言われている犬肉レストランに案内してもらった。

『第一家脆皮肉館』というお店だった。昔は店名に“狗(犬)”の文字が入っていたのだが、時流にそって消したそうだ。

ただ、お店の軒先に犬肉を吊るして肉切り包丁でバンバンと捌いている。ふと横を見ると、路上に丸焼きになった犬肉がゴロゴロと転がっている。隠す気はないようだ。

どのお店もにぎわっている(筆者撮影)

グループ店が3軒並んでいるのだがどのお店も超満員だった。韓国のように初老の男性ばかりではなく、家族連れの客、男女のペア、会社のグループなどさまざまな人たちが和気あいあいと食事を進めていた。文化に根付いた食事なんだな、と思った。

品数は少なく、犬鍋だけだった。ぶつ切りにした犬肉をあまがらいタレと野菜で和えた料理だ。韓国の犬肉料理に比べて、臭みが少なく食べやすかった。ただ、かなり乱雑に切ってあるため骨や筋も多い。

ガイドが「この部分コリコリしておいしいよ」と言いながら渡してくれた肉を見ると、犬の足の肉球だった。急にゲンナリしてしまった。

「文句を言われる筋合いはない」

ガイドを通して現地の人に話を聞いた。

犬鍋(筆者撮影)

「中国国内で犬肉料理に反対しているのは結局、上海とか北京とか北の連中だ。北はもともと、穀物などがたくさんとれたから犬を食べる必要がなかった。南部はなかなか食べ物がとれなかったから何でも食べた。何百年も食べてきているのに、文句を言われる筋合いはない」

とかなり興奮しながら話してくれた。怒りは収まらず、政府に対する悪口になった。

「中国南部の人間はとても強い。戦争も強かった。だから毛沢東の軍隊をやっつけた。中国共産党はそれをいまだに恨んでいて、中国南部はビルなどのインフラ整備が遅れている。嫌がらせをしているんだ。観光ですごく稼いでいる桂林市でさえ路地に入るとボロボロのビルが立ち並んでいる」

日本にいるとつい中国を一枚岩としてとらえてしまうが、実際には地域によって考え方も習慣も違う。漢民族と少数民族の間にも埋められない距離があるという。

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