大谷翔平の「二刀流」はメジャーで通用するか 成功するために必要なことは何なのか?

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「ピッチャー大谷」としては、150イニング以上投げて、防御率2点台。これが、求められる数字ではないかと思います。

ピッチングにおいて大谷選手の課題になりそうなのは「安定感」です。英語では「コンシステンシー」といいますが、ダルビッシュ選手や田中選手など、日本で抜群のコンシステンシーを誇っていた選手もメジャーリーグでは苦戦しています。下位打線でも長打を打つこと、膨大なデータによってすぐに研究されることが、日本人ピッチャーを苦しめています。 

メジャーリーグでは特に高いコンシステンシーを誇るピッチャーが一番手、二番手になっていくので、その要素は大谷選手も今後絶対に求めていかなくてはなりません。

これまでの大谷選手は二刀流でプレーしてきたこともあり、現時点ではまだコンシステンシーを極めきれていません。日本での最終登板で見せたピッチングはメジャーリーグのエース級なので、あのレベルをつねに安定して見せられる技術力を身に付ければ、一番手、二番手のピッチャーになれると思います。

二刀流成功に必要なこと

バッティングに関しては、大谷選手の飛距離はメジャーリーグでもトップクラスに入るのではないかと思います。バットコントロール、縦変化への対応力のもろさはまだありますが、メジャーリーグで大事なのは球の緩急にどれだけ対応できるかであり、その能力に関して彼は非常に長けています。

大谷選手のバッティングであえて欠点を挙げるとしたら、能力が高いゆえにその能力だけに頼っていて、配球の読みが甘いところでしょう。とはいえ、配球の読みはもう少し経験が必要なので、成長段階の今から求めてしまうのは早すぎるかもしれません。技術、体力、思考と、すべてにおいてまだ伸びしろがあるので、そこは楽しみにしておきたいと思います。

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ピッチャーとしてだけの挑戦であれば、半年もすれば水に慣れて、1年目のシーズンで15勝くらいは十分できるだろうと思います。ただ、二刀流に挑戦するとなると登板数も減るので、その分勝つチャンスも減ります。

また、バッティングについては、メジャーリーガーの速球をいきなり攻略できるとは思えないので、ある程度時間が必要ではないかと感じます。

二刀流で活躍できるのかはもちろん本人の頑張り次第ですが、それ以上に大谷選手がどれだけ低迷してもチームが我慢して使えるかどうか、それが大きな鍵となるでしょう。

先発ローテーションなら3番目以降、打順は6番以降であまりプレッシャーを与えない環境をつくることも大事かもしれません。

僕の個人的な見解ですが、二刀流での成功を期待するのであれば、「3年経ってどの程度の成績を残せているか」という長い目で見てもよいのではないかと思います。とはいえ、水に慣れさえすれば1年目でブレークの可能性もゼロではありません。

建山 義紀 元プロ野球選手

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たてやま よしのり / Yoshinori Tateyama

1975年大阪府出身。東海大仰星高、甲賀総合科学専門学校、松下電器を経て1998年ドラフト2位で日本ハムファイターズに入団。主に中継ぎ投手、抑えとして活躍。 2010年オフにテキサス・レンジャーズに入団。2013年6月にニューヨーク・ヤンキースに移籍。2014年6月に阪神タイガースに移籍し、同年11月に現役引退を表明。引退後は野球解説者として、テレビ・ラジオでの中継解説、新聞評論など幅広く活動中。2017年11月、第1回アジアプロ野球チャンピオンシップの日本代表投手コーチを務めた。メジャーリーグ通算53試合登板。3勝1セーブ4ホールド。日本プロ野球通算446試合登板35勝27セーブ84ホールド。

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