【産業天気図・建設】マンション市況の悪化や民間設備投資の縮小で雨続く

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

建設業の2008年度後半の空模様は「雨」、09年度も「雨」が続く見通しだ。
 
 現在の建設業を取り巻く事業環境のうち、マンション建設市場の落ち込みは、期初の予想を大きく上回る。特に中位以下のマンションデベロッパーの経営の悪化が厳しい。これは、1)中堅以下のデベロッパーが得意とする郊外型のマンションの落ち込みが特に厳しい、2)地価の回復期に高価格で仕込んだマンション建設用の保有土地がかなりあり、これを当面は塩漬けにぜざるをえない、3)用地の塩漬けと売り上げの不振による利払い負担が拡大している、4)それにもかかわらず銀行が新規融資を絞り込んでいる−−ことなどが理由だ。
 
 こうしたマンション市場の落ち込みが、マンション依存度の高い中堅の建設会社の経営を大きく圧迫している。また、デベロッパーの信用リスクが拡大しているため、建設会社としてもマンション建設の請け負いに慎重にならざるをえず、経営環境は着工の落ち込み以上に厳しくなっている。
 
 こうした中、夏以降、デベロッパーの破綻が相次いでおり、これによる建設会社の営業債権の取立遅延や不能が発生する危険性が高まっている。たとえば、完工高に占めるマンション建築工事の比率が高い長谷工コーポレーション<1808>の今09年3月期は、完工減による営業減益となる見通しなうえ、取引先のマンション・デベロッパーの近藤産業の破綻で債権約45億円の取立不能や取立遅延の可能性が浮上している。
 
 また、大型都市再開発案件の一巡も、開発事業の比率の高いゼネコンの収益回復の足を引っ張りそうだ。都市開発は、六本木の「東京ミッドタウン」や「新丸の内ビル」の完成など、代表的な大型工事の完工が前07年度に相次ぎ、大型案件は一巡の感がある。清水建設<1803>でも、前期営業増益を牽引した開発事業利益が減り、今期は営業減益となる見通しだ。
 
 もう一つ足元の悪材料は、公共工事における談合からの決別によって生じた低価格落札案件が今期から来期にかけて続々売り上げに計上されてくることだ。極端な低価格落札は減ってきてはいるものの、当面、建設会社の利益圧迫要因となることは間違いないだろう。さらに、これまで建設需要を支えてきた民間設備投資関連の案件が、経済全体の先行きの不透明感から落ち込んでくると考えられることも大きな懸念材料だ。
 
 技術力とブランド力のあるゼネコンでは、設計・施工一貫受注比率の向上や総合評価入札方式による公共工事受注の増加などが期待されるが、公共投資の縮小や民間建築の低落傾向をカバーできそうもない。
【福永 宏記者】

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