「会議で沈黙する人」に決定的に足りない視点 そこに「相手目線」はありますか?

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そもそも、「質問で頭が真っ白」になる原因は、質疑の準備不足です。会議では「発表」と「質疑」が必ずセットです。しかし、若手はとかく「発表」準備にだけ目がいってしまい、質疑のケアが不十分になってしまいがちです。質疑への準備として、「想定問答」と「手持ち資料」(必要に応じて相手に見せる手元の資料)、つまり、聞かれる可能性のある質問への回答と、会議トピックに関連する資料の準備をしないことには、会議全体の準備をしたことにはならないのです。

ただし、ここで問題になるのが、「どこまで準備すべきか」です。あらゆる質問を網羅した想定問答や、あらゆる角度からの「詳しくは?」に答えられる手持ち資料を準備するのは困難です。会議準備にあてられる時間は有限なので、どこかに「区切り」をつけなければなりません。いったいどのような基準で判断すればいいのでしょうか?

そこで、トップコンサルタントがどのように「想定問答と手持ち資料」を準備すべき範囲を決めているかを紹介します。ポイントは、会議参加者の立場(肩書)です。

どのような質問が飛んでくるかは、質問者の視点によって変わります。経営者目線で全社の目指す方向性を考える立場の人と、現場目線で目の前の業務をひたすらこなす立場の人で、同じ質問が飛んでくるはずがありません。この性質をもとに、想定問答と手持ち資料の準備範囲を見極めるのです。

「想定問答と手持ち資料」準備の判断基準

たとえば、相手の立場を「現場担当者レベル」「部課長レベル」「役員レベル」3つに分けて考えてみましょう。

まず、現場担当者レベルの人が相手の場合、質問内容は発表資料に対する「How(で、自分はどうすればいいの?)」と「Why(なぜそうしなければならないの?)」の2点に集中することがほとんどです。現場担当者が見る範囲は目の前の自分の業務であり、自分がどうすればいいのか(どうなるか)が主な関心事だからです。そのため想定問答と手持ち資料としては、「あなたはこうしてください(こうなります)」および「そうなる理由はこうです」と説明できるものを最低限、準備するとよいでしょう。

次に、部課長レベルが相手の場合、質問内容は「なにがいつまでに達成されるのか(What/When)」という全体像の話に加え、「売り上げへのインパクトや投資対効果は(How Much)」などおカネの面が強くなる傾向があります。細かな進め方(How)は現場担当者クラスに任せ、自分はマイルストーンに対する進捗・課題・リスクの把握を行う一方、組織をまたぐコミュニケーションや役員クラスへの報告に使う論理を求めていることが多いのが理由です。そのため想定問答と手持ち資料としては、「結局どうなるのか(So What)」「いつまでにできるのか(When)」「いくらかかるか(How Much)」に答えられるものを準備することが望ましいでしょう。

最後に役員レベルが相手の場合、質問はさらに広く深くなります。会議トピックに関連するトピックのみならず、ほかの事業との優先順位、競合他社に勝てる理由や、ヒト・モノ・カネの経営資源の配分や調達方法、CSR(企業の社会的責任)など、全社を俯瞰した観点からの質問も想定する必要があるでしょう。

このように、現場担当者レベル・部課長レベル・役員レベルと大きく分けるだけでも、どれだけの想定問答と手持ち資料を準備するべきかのざっくりとした目安がわかるようになります。

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