月収12万の私が自覚してなかった貧困の真実 「100%自分が悪い」と自らを責め続けていた

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――お二人とも就職氷河期を体験された年代ですよね。

雨宮:そうです。私も1990年代、18歳から東京でひとり暮らしを始めました。その頃の地獄めぐりのような状況をすごく的確に書いていらして。このような話は自分の身近にあったけど、改めてまとまった形で読むと、よく生き延びてこられたなと感動しました。

小林:ありがとうございます。自分は生活保護を受けてそれを切ることができたのですが、生活保護を切るまでの本はこの世に存在しないということに気づきまして。生活保護を受け始めるまでを綴った『失職女子。〜私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』著・大和彩(WAVE出版)という本はあります。でも、それを切る方法が載っている本はどこにもなかったので、それなら自分で書こうと思い、当初は同人誌で発表しました。

女性の貧困は隠れがち

女性の貧困は女性ということが隠れ蓑になって、問題が可視化されない(撮影:尾形文繁)

――女性の貧困は男性の貧困と比べてまた違った特徴がありそうですが、お二人はどう思われますか?

雨宮:特徴というか、男性の貧困って特に無職だとリアルに非難を受けるというか、親や周りから怒られるじゃないですか。でも、この本を読んでいてもそうですが、女性ということが隠れ蓑になって、問題が可視化されないというか。精神疾患があり働けないという場合や、それ以外の理由で働けないときでも実家にいれば「家事手伝い」という言葉で隠れてしまうので、ある意味あまり問題とされません。働けずに貧困だったことに、親が死んだ後でないと気づかれない可能性もあります。

女性の場合は「どうせ結婚するんだから」とか「花嫁修業中」とかで、男性より問題化されにくい面があります。でも実家暮らしだと、どんどん親が高齢となって、なしくずしに親の介護をやることになるケースもあります。

働けないことを責められない一方で、親の年金だけが頼りという生活の中で困窮し、介護疲れもあって一家心中という事件もあります。だから、そういう女性特有の巻き込まれ方や気づいてもらえなさといった感じはありますよね。

小林:女性だと特に、実家と縁が切れている人は大変だと思います。あと、貧困関係の本を読んでいると、シングルマザーの貧困は深刻だと書いてあります。相対的な貧困の割合も女性の方が高いようです。特に、雨宮さんがおっしゃったように、女性だと結婚をすればここから抜けられる、みたいなのがあると思います。本で書いたのも「結婚して生活保護を抜けました」というオチだったら面白くないと思うんですよ。

雨宮:それは解決じゃないですよね。

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