特別仕様車まで造るトヨタディーラーの凄み 名物経営者がディーラー業界の未来を占う

拡大
縮小

 ――カーシェアが普及すると、新車が売れなくなるのではないですか?
 そうは思わない。一般のお客様だと8年間は買い替えないが、カーシェアでは大体4年で買い替える。カーシェアの利用者が増えることは必ずしもマーケットの縮小にはつながらない。買い替えサイクルは景気によって長くなったり短くなったりするが、驚くほど上下したりはしない。

 ――危機感はありませんか?
 大きなインパクトがあるのは、2030年代に人口構成を大きく占める団塊ジュニア世代が引退することだ。当社だと約3割も減る。労働集約型産業なので、労働者が減るという危機感は大きい。さらにもっと飛躍的な技術革新があったり、自動運転技術が一気にレベル4(特定の場所を走るといった一定の条件下で、すべての操作をシステムが行う)になったりすれば、どうしても4つの地盤が崩れてくる。自動車がコモディティ化すると、今までは高付加価値で差別化していたものが薄れていく。それはメーカーが専売制を維持するだけのコストを負担できなくなることにつながりかねない。

整備士向け最新ツールを大学と共同開発

KTグループは2017年に展示会「KTグループが今実現したいこと」を開催。大学と共同で開発してきた技術の実用化に向けて、企業に協力を求めた(写真:KTグループ)

 ――では、今からどういう対策をすればいいのでしょうか?
 少ない社員でいかに良質なサービスを維持していくかがカギを握る。たとえば、社員や車の移動を極力減らせないかと考える。その点では、整備士が車の複雑な機構を離れた場所から映像で見たり触れたりしながら診断できる技術が欠かせない。映像通信技術と触覚伝送技術を応用したツールを開発しようと、10年ぐらい前から大学と共同で取り組んできた。

要素技術は完成しており、あと一つ何かの力が加われば成就できるものが大半。そこで昨年4月に展示会「KTグループが今実現したいこと」を初めて開催した。これは世の中への「こういうことをやっていますよ」という発信・提案ではなく、私たちが欲しいものを作ってくれそうな企業に対する「こういうものを作ってくれませんか」という展示会だ。幸いにも展示会で協力してくれる企業を見つけることができ、動きだしている。

 ――過去にもユニークな取り組みが多いですね。

KTグループ傘下の神奈川トヨタが2017年に発売したプリウスの特別仕様車「濱プリ」。内装はクルーザーをモチーフにした。販売台数は少ないが、標準タイプのプリウスの販売に一役買っている(写真:KTグループ)

特別仕様車はわれわれが最初に出したものだ。自動車メーカーが始めたのではない。生産ラインでなく流通加工の段階でできるだろうと。かつて日米貿易摩擦の緩和を図るために米GM(ゼネラル・モーターズ)の「キャバリエ」をトヨタが輸入して売っていたことがある。品質的になかなか苦労した車だったが、われわれがカスタムカーを造り、メーカー系ディーラーとして約20年前に初めて「東京オートサロン」に出展した。去年は横浜財界からの要望もあり、トヨタのHV(ハイブリッド車)「プリウス」でオリジナルの「濱プリ」という車も出した。  

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