回転寿司、「日商100万円」の尋常ならざる世界 4社でシェア75%、寡占化の中で進む同質化

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郊外のレストラン市場を見ていきましょう。

今世紀に入って誕生した新フォーマットは低客単価と新たな利用動機を創造しています。

讃岐うどんを提供する「丸亀製麺」は00年に加古川に1号店を出店し、11年に500店舗(全店直営)を達成。10年前後、怒涛の出店を実現しましたが、近年は国内の出店スピードを緩めて(784店舗、17年6月末)、海外出店に軸足を移しています。釜揚げうどんは290円から。トッピングしても500円前後、家族4人で2000円。客単価は回転寿司2分の1。店内厨房にライブ感があり、外食の楽しさを演出しています。

同質化競争から抜け出せるのか

このビジネスモデルは、セルフ販売による低い人件費比率と、うどん主体の低いフードコスト(25%程度)により実現が可能となりました。日商は30万円前後でしょうか。

スシローのまぐろは100円(都心店120円)+消費税。シャリもネタも小さい(筆者撮影)

もう1つ、郊外を席捲するチェーンが「コメダ珈琲店」(762店舗、8月末)。西日本、東日本への出店余力があることから、1000店舗は突破していくと推測できます。

同チェーンの強さは3つ。コーヒー&スイーツ主体の郊外型チェーンがほとんど存在しなかったこと。客単価600円強の新たな市場を開拓したこと。そしてモーニングとアイドルタイムの集客が実現できたこと。この3つで新たな市場を創造して店数を増やしています。日本フランチャイズチェーン協会提出の資料によると想定日商は20万円強です。 

はま寿司のまぐろは100円+消費税だが、シャリもネタも小さい(筆者撮影)

郊外のレストラン市場は、「讃岐うどん」という全く新しい業種、あるいはモーニングやアイドルタイムといった全く新しい時間帯、こうした需要創造により活性化が図られています。この2チェーンは、どこにもマネのできない革新性を武器に成長を遂げています。

翻って回転寿司は、シャリを自動で握り続ける寿司ロボの大手メーカー(ほぼ1社)、回転レーンの大手メーカー(ほぼ1社)のイノベーションに支えられています。特に10年前くらいから普及したタッチパネルによるオーダーシステムにより、効率化が図られました。アイドルタイムに寿司を回す必要がなくなり、また客数や客層を見て回すネタの種類を判断する業務が大幅に削減しました。廃棄ロスも格段に少なくなったと推測できます。こうした関連機器メーカーの革新には今後も期待したいところです。

しかしながら、今、回転寿司業界に必要なのは新たなフォーマットや新たな立地、メニュー、サービスの追求、そして利用動機の創造など、企業独自の戦略により、同質化競争からの脱却を進めることではないでしょうか。それが実現できてこそ、消費者の選択肢も増え、業界全体が活性化できるのだと思います。

梅澤 聡 エディター(外部食研究家)
うめざわ さとし / Satoshi Umezawa

大学卒業後、西武百貨店に入社、ロフト業態の立ち上げに参加。その後、商業界に入社、月刊『コンビニ』、月刊『飲食店経営』の編集長を歴任し、2015年よりフリーランス。中食市場が拡大する現況下、コンビニの中食、それに飲食店の外食を結び付けた「外部食」を1つの市場と捉え、スーパーマーケットの「内食」に対して「外部食」のマーケットとマネジメントをテーマに執筆・編集を続けている。

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