日本人は、なぜ家族との関係が「薄い」のか フランス人は家族との時間を第一に考える

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私の場合、独身時代は最低でも月1度は会っていた。そして、子どもが生まれてからは、毎週のように会っている。日本に住んでいたときは、さすがに年に1回しか帰国できなかったが、最低週1のペースで親から電話がかかってきていた。

それに比べて日本人は、お盆とお正月、年にたった2回しか里帰りしない人が意外にも多い。日本の友人が「毎年、正月に実家に帰ると、その度に親が老け込んでいて悲しくなった」という話を聞いてとてもショックだった。もちろん、子育てをしている友達には頻繁に帰省している人もいるだろう。しかし、どう見ても、フランス人のほうが家族との交流にエネルギーを使っている。

SNS上にこだまするフランスママたちの怨嗟

私は、家族と会うことは、エネルギーの交換だと思っている。調子がいいときは、気分が上がるポジティブな活力をもらえるし、悪いときは、人間関係に疲れてダウンしてしまう。ちなみに、今回の年末の集まりでは、正と負の両方のエネルギーを受けてしまった。10月辺りから始まる家族のスケジュール調整やプレゼント交換をどういう形にするかというきりのない議論。一生懸命作ったにもかかわらず、家族たちに人気がなかった手料理。悩みに悩んで買ってあげたのに、一瞬で横に置かれた甥っ子へのプレゼント。友達からもらったいらないカードゲームなどなど……。

これはうちにかぎったことではない。SNS上では、同年代のフランス人のママたちが「私は子どもにサンタクロースを信じ込ませたくないのに、親がしつこくサンタの話をしていて、もうあきれた!」とか「義理の親はクリスマスプレゼントとしてうちの子にタブレットを贈るつもりだと言っている。わが家ではタブレット反対と何度も言っているのに、どうして話を聞かないで押しつけるの!? もう信じられない」というような悩みが公開の場で交わされている。

しかし、幸いに、こういう面倒くさいことに目をつぶれば、「ああ、1年もあっという間だったね。何だか楽しかったね」とありがたく感じる部分もある。奇跡的に会えた家族や親戚たち。お互い意見が合わないけど、それぞれの意見を自由に話せたし、これまで黙っていた親への文句も伝えられた。

エネルギー交換は、運動と同様で、やっている間は疲れるが、終わった後はスッキリする。日本では新年に備えて大掃除をするという習慣があるが、それと同様に、フランス人にとって、年末年始という期間は、家族とがっぷりと組んで、1年間の家族間で生じた混沌を大掃除する機会なのではないかと思う。

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