「ふるさと納税」がアパレル工場に与えた幸運 寄附金2億円達成の工場に得られるヒント

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約4年前、アパレル工場の中でいち早くふるさと納税に参入したのが、岩手県北上市でカシミヤ100%の商品を作っている『UTO』。開始2カ月で寄附金は1000万円を超え、直近の1年では寄附金2億円(=売上6000万円)を達成しました。

UTOのニットセーターの仕上げ工程。すべてのカシミヤニットが北上市でつくられる(写真:UTO)

『UTO』の商品は誰もが知るような世界の有名ブランドから支持されているように高い品質を誇りますが、これだけの寄附金が集まっている背景として、商品や地域の魅力をサイト上でしっかりと伝えていることが挙げられます。

ふるさと納税のサイトに情報をなんとなく載せているだけでは、人々の心を動かすことはできません。寄附する側にとっては税金が控除されるという実利的なメリットもありますが、それと同時に、自分が好感を持てる地方を応援したい、そしてそこにある企業を応援したいという思いも持っています。

『UTO』は、工場の理念や商品へのこだわり、作り手の顔写真などをふるさと納税のサイト上に掲載しており、リンク先の自社ホームページでは北上市の魅力にも言及。なぜ『UTO』の商品を選んでほしいのか、なぜ北上市に寄附してほしいのかという“ストーリー”を細やかに伝えています。

UTOの宇土寿和社長(中央左)と遠藤政治工場長(中央右)。ニットの風合いは命だ(写真:UTO)

官民が一体となって戦略を立案

ふるさと納税で支持を集めるためには、ビジネス的な戦略も必要です。『UTO』では、35万円という高額商品をあえてラインナップに加えることで、価値の高い商品を作っていることをアピール。去年商品を選んでくれた人に今年も引き続き選んでもらうために、新商品の開発にも力を入れています。

これらの取り組みは自社だけで考案しているわけではありません。北上市役所の担当者とアイデアを交わしていることも、『UTO』が成功を収めている要因の1つです。 「北上市をともに盛り上げていこう」という同じ目的のもと、官民が一体となって商品プランや情報発信などの戦略を一緒に考える。毎日連絡を取り合うほどの密な関係性を築いていることが、リピート率25%という数字に結実しています。

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