「黒塗りメイクは世界では人種差別行為だ」 在日13年の黒人作家が書き下ろした本音

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第3に、ブラックフェイスは許されるべきではないという意見が、世界では趨勢的である。日本もその正当な一員としての立場を確保しているグローバルコミュニティでは、こうした良識を欠く行為は容認できないという見解で一致している。

現在、日本は東西の思想が融合した好例として、先進国の地位を得ている。ブラックフェイスそのものについては日本のメディアやエンターテインメント界で150年を超える歴史があるが、日本人が文化面での理想の一部としてブラックフェイスにこだわっているのではないと私は考えたい。

ブラックフェイスは氷山の一角

さまざまな人種や国籍の外国人が、現在の日本が持つ魅力的なイメージに引かれて日本への旅を考えている。日本人がブラックフェイスを用いたり、擁護したりしていることは、これらの外国人には、日本人の心理に潜む(ほかの無神経な表現にも表われがちな)無神経さの表れと映る。

このことを日本人が知ったら、ブラックフェイスや、そのほかの人種的特徴の戯画化は、面白かろうがなんだろうが、やめるだろう。公共の場での喫煙を禁じたように。また、日本が示してきた環境生態系に対する品位や洗練を、日本が避けて通ることのできない多元文化への歩みを受け止めるだろう。

とはいえ、ブラックフェイスは氷山の一角にすぎない。これは大いに注目を集めた一角だが、実はさらに大きな病の兆候でしかない。ブラックフェイスそのものが必ずしも人種差別主義的という訳ではないが、日本には人種差別と排外的な感情が確かに存在する。

家探しや職探し、警察による人種や肌の色を疑念の根拠とするような捜査、外国人へのサービス提供を拒む企業や店。そのほかにも目立たない形で、差別はある。大部分の日本人はこうした実態を認識していないため、日本には人種差別はないと確信を持って主張する。今回のように目立つ、警鐘を鳴らすような事態が発生したときに、それが多くの注目を集めることは驚愕に値しない。

問題は、こうした事例を減らすために何ができるか、ということだ。

日本が根深い差別的な考え方をなくすべきであることは、明白だ。なぜなら日本の未来にとっては、日本人と非日本人や多人種・民族の血を引く人々との共存は極めて重要な命題だからだ。これに疑いを持つ人はいないだろう。だが、言うは易く行うは難し。特効薬はない。

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