自衛隊撤退後の南スーダンで起きていること 避難民「家に戻ったらまた襲撃されるかも」

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:家に戻ったら襲撃されるかもしれないというのは、停戦合意が政府と反政府軍の間でなされていても起きうるということですか?

今井:今は、武装勢力が本当にたくさんあります。元々は主に2つのグループに分かれて対立構造が始まったのですが、その後、政府軍の中から寝返って反政府軍の側に転じた軍の司令官を中心としたグループができるなど、反政府軍の中でもいくつかに分かれています。あるいは住民が襲撃された時に自分たちで自警団のようなものを作って、その自警団が武装勢力のようになっているケースもあります。本当に相当な数、誰も把握ができていないほど数は増えています。

:秩序が入り乱れている中で、何とか均衡を保っているという状況なのでしょうか。

今井:首都ジュバでは政府軍が掌握しているのである程度落ち着いています。実際にジュバに行ってみると、ごく普通に市場に買い物に人々が来ていて、子どもたちも遊んでいるような状況もあります。しかし、国全体で見ると治安が保たれていないという状況が数多くあります。

:内戦の中の日常ですね。

自衛隊派遣は「PKO参加5原則」を満たしていたのか

:自衛隊派遣の大前提は、停戦状態にあるとか秩序が保たれているなど、PKO派遣のための5つの原則を満たしていることでしたよね。後に明らかになったのは銃弾が飛んでくるような状況もあったと。そうしたことを記している日報の存在の有無や公文書として扱うか否かが大きな問題になったわけですが、現地への派遣は適切だったのかなど、今井さんはどのように考えていますか?

※PKO参加5原則
1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること
2)国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること
3)当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること
4)上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること
5)武器の使用は、要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能

今井:2013年以降は国が内戦状態になって、現に首都ジュバでも大きな戦闘が2回、2013年12月と2017年に起きていますので、とてもPKOの5原則を満たしている状況ではなかったと思います。現に、「衝突か、戦闘か」と問題になった時ですが、今私たちが活動している避難民キャンプというのは自衛隊の宿営地のあった場所から1キロ程のすぐ側なんです。避難民キャンプの住民の方々に話を聞くと、その時にはそのキャンプ周辺、一帯ではものすごい銃撃というか砲撃が繰り広げられて。その方たちも避難民キャンプを離れて逃げていって、戻ってきたら略奪されていたと言います。そういった状況だったので、ジュバの中というのはとても平穏とは言えない戦闘状態だったと言えますね。

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