アサヒが「ストロングビール」で勝負する理由 ビール市場縮小に歯止めをかけられるか

拡大
縮小

一方で、アサヒが投入するのは、あくまでも本丸のビールだ。グランマイルドの価格帯は、「スーパードライ」など通常のビールと変わらない。

そこには低迷の続くビールを何とかテコ入れしたいという思惑がある。ビールの出荷数量は、発泡酒や新ジャンルの拡大もあり、1994年度をピークに減少の一途。足元でも昨年6月の酒税法改正で過度な安売りが規制されたため、スーパーなどの小売店で店頭価格が上昇。より安いチューハイなどへ消費者が流出していた。

アサヒはビール市場の約半数のシェアを占めるスーパードライというメガブランドを持つが、1987年の発売後3年で突破しこれまで維持し続けてきた1億ケース販売という大台を2017年実績では割り込んでいる。シェアトップゆえに、アサヒの危機感は人一倍強いはずだ。

「手軽に安く酔える」とは一線を画する

アサヒの田中マーケティング本部長は、グランマイルド投入の狙いについて、「缶チューハイなどよりも、これまで洋酒などが中心だった時間をかけて楽しむお酒の市場を狙っている。手軽に安く酔える、とは一線を画しているつもりだ」と強調する。

アサヒビールの平野伸一社長。今年を「ビール改革元年」と位置づける(記者撮影)

また、今後の税制改正の影響もある。新ジャンルは2026年にかけて段階的に350ミリリットル缶1本当たり20円以上増税される一方で、ビールは逆に20円以上減税されることが決まっている。ビールの販売に追い風になる新税制を見据え、「2018年はビール改革元年」とアサヒの平野社長はビール強化の方針を掲げる。

チューハイをきっかけに広がった高アルコール製品。”ストロングビール”で再びビールに消費者を振り向かせられるか。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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