「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由 外国人芸人がその魅力を分析

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僕が「日本のお笑いは世界一、面白い」と言うと、「どこが?」と驚く人も多い。詳しくは著書に詳しく書いてあるのですが、今回あらためて簡単にまとめると、オワコンになりようがないと思うポイントは3点あります。

1つは、日本には圧倒的な数の芸人がいること。「数で勝負かい!」とツッコミが入るかもしれませんが、ブラジルはサッカーが強いのと同じ理屈で、お笑いに人生を賭ける人数が多いほど必然的にレベルが高くなるということはうなずけるかと思います。お笑い専門の劇場もあちこちにあり、お笑い番組も多く、海外と比べてものすごくハードな競争が繰り広げられているのです。

日本のお笑いは「チームプレイ」

2点目のポイントは、日本の社会の仕組みにも少し関係しています。それは日本独自の上下関係と、みんなで場を盛り上げる「チームプレイ」です。

後輩を育てる文化が根付いている日本では、先輩が年がら年中、若手にアドバイスをします。反面教師にするかは後輩の自由ですけど、そんな環境の中で育つ日本の芸人と、個人プレイが主流の海外のコメディアンとでは、磨き上げ具合が全然違うんです。オーストラリアという、上下関係とは無縁の国に生まれ育った僕でさえ、上下関係は合理的だと思います。

お互いが対等に主張したら話がまとまりにくくなりますが、上下関係があると話がスムーズな場面も多い。また、先輩には気を遣うといっても、後輩だってオモロイと思われたいし、自分の芸においては我慢しません。ただ、ガチのケンカを見せても面白くならないから、どっちがより多くの人を笑わせられるか、というところでバトルします。

よく、日本人は空気を読むと言われますが、空気を読めるからこそ、巧みに笑いを取れることもあるのです。それと関連して、日本では、トークやコント、歌などを組み合わせたバラエティ番組が多く、多様な出演者が並ぶ中でうまく立ち回ったり、誰かをフォローしたり盛り上げなくてはなりません。いわば「チームプレイ」の力。そんな緊張感の中では「オワコン」になるまでもなく、進化し続けないと生き残れません。

3点目は、日本のお笑いが海外のお笑いよりも上だと思う、決定的な点でもあります。僕が思う海外のお笑いの4大テーマは「政治」「宗教」「人種」、そして「下ネタ」と言っていいでしょう。対して日本のお笑いは、それらを避ける傾向にあることです。それを海外の人にいうと、みんなが驚きます。「一体なにで笑いを取るねん?」と。

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