ソニーは、なぜおかしくなってしまったのか 丸山茂雄氏「ちょっとソニーの話をしよう」

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丸山:そりゃ気持ちいいもん。その座にずっといたくなるよ。でも、そこが単なる凡人たるところだよね。自分がなんにもできてないことに対する反省っていうのがないんだから。それをずーっと続けて、ソニーはおかしくなっちゃったんだよね。

結局、ストリンガーさんに代表取締役の座を持っていかざるをえなくなったのも出井さんのせいだし。ただ、平井さんの代表取締役就任は意外とよかったかもしれないと俺は思っているんだよね。多分、平井さんは、自分がめちゃくちゃ優れてるとは思っていないんだよ。だから、よかったんだと思う。

黒川:自分のことをわかっているという。

丸山:部下の意見を聞くっていう部分で言えばね。出井さんみたいにちょこちょこっと何かの本を読んで、それをあたかも自分のアイデアのように振り回すみたいな、下の言うこと聞かずに、その付け焼き刃のアイデアを実行するっていうことはしてないからね。

基本的には出来のいい下のヤツの言うことをちゃんと聞く。こう言うと自分のことをすごくほめることになるんだけど俺もそうだよ。俺も自分がそんなに利口だと思ってないから、出来のいい若いヤツ集めてそいつらにやらせる。俺が決めるのは方向だけ。まあ、俺の取り柄はカンがいいってことだけだな(大笑)。そういう意味では平井さんもカンはいいのよ。

平井さんが社長になったのは軽率?

黒川:そういえば、丸さんが別のインタビューで平井さんがソニーの社長受けたのはちょっと軽率だったんじゃないかっておっしゃっていた記憶があるんですけど。

1月8日、「CES2018」で講演するソニーの平井一夫社長(写真:AP/アフロ)

丸山:うん、言った。

黒川:それはどのように解釈すればいいんでしょうか。

丸山:ソニーっていう会社は世界で名前が売れるようになってから優秀な頭のいい連中が毎年どんどん入るようになるわけよ。でも、一方でソニー・ミュージックには、お利口サンとか頭のいいヤツはエンターテインメントビジネスにはまったく向かないっていう考え方があってね。アホだけど面白いヤツだなっていうのを採用してたのね。

だから、ソニー・ミュージックっていうのは「頭は悪いけど面白いヤツの集団」っていうふうにソニーからは見られてるわけ。その二等グループの社員が頭のいいソニーの人たちの上に立つってことになるとね。コントロールが難しくなる。人っていうのは、基本的にアタマの悪い人に支配されたくないって気持ちがあるし、反対に、その人に人徳や経験があれば「あの人の言うことだから聞こう」っていうのがあるでしょ? 正しいことを言ってるかどうかじゃなくね。

そうなると旗を振っても、フッと後ろを見たとき誰もついてきてないっていう苦労をすることになる。だから、ソニー・ミュージックの社員がソニーのトップになるのはいかがなものかっていうのが俺にはあった。ソニーの人たちは、ソニー・ミュージックのアホな連中がって、という感じに思っているだろうなっていうのがわかっていたからね。

黒川:なるほど。

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