お化け屋敷を撤去、ロンドン駅ナカ最新事情 英国でも駅活用型ビジネスが動き出した

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ネットワークレールでは昨年、パディントン駅の一角にショッピング&グルメスポットを増設した。パディントンといえば、言うまでもなく絵本「くまのパディントン」の舞台だ。同駅もある種の訪英客にとっては「ロンドンで訪れたい観光スポットの一つ」となっている。1番線ホーム横に置かれた「くまの銅像」、そして公式グッズストアへは観光客がひっきりなしに訪れている。

紹介した2つの駅はいずれも「駅の観光地化」が進んでいる例と言えようか。列車に乗る用事がないのにわざわざ駅を訪れて、施設におカネを落としてくれる客層がいるのは興味深いことだ。

クリスマスの大規模な運休で最後の仕上げが行われた。看板の後ろには37台もの改札機がずらりと並ぶ(筆者撮影)

しかし、ロンドンブリッジ駅にはこうした観光スポットになる要素はない。ロンドンブリッジ自体は童謡『ロンドン橋落ちた』で知られているが、さすがにロンドンブリッジ駅にはハリー・ポッターほどのインパクトはないだろう。

ただ、同駅を利用する人の流れを考えてみると、これまでのロンドンのターミナル駅とは少々違ってくる可能性もある。従来のナショナルレール(旧国鉄)利用客は、地下鉄などの都市交通機関でターミナルへ来て、そこから郊外行きのナショナルレールの電車に乗り換えるという動きだった。

ロンドンのターミナル駅はどこも行き止まり式ホームとなっており、ホームへの入口に改札口があり、店舗はコンコースにのみ設けられている。このような従来の駅の構造と比べると、ロンドンブリッジ駅の構造は地元の通勤客には目新しいものと映るだろう。

トレンドに合った店は生まれるか

ところがロンドンブリッジ駅には今後、テムズリンク線が乗り入れるほか、市内中心部の主要駅とも直結する。そのため、改札内での乗り換え客が従来よりも相当増えることが見込まれる。駅内の施設には「帰りにちょっと買い物」という会社員たちによる利用が期待できよう。

改札内スペースには今後、ポップアップショップが増えるかもしれない(筆者撮影)

イギリスのショッピングモールや空港では、需要が高まってくると屋台店のようなポップアップショップやワゴンカフェなどを次々と追加し、人々のニーズに対応する。ロンドンブリッジ駅にも「サッカーのピッチより広いスペース」を使って、その時のトレンドにあったユニークなお店がいずれ現れることだろう。イベント的な要素も持った柔軟性のある出店方法は利用者の目を日々楽しませることだろう。

長年にわたって鉄道利用者だけでなく周辺住民にもさまざまな迷惑をかけながらようやく完成した駅施設は、人々にどんな効果をもたらすだろうか。少なくとも「“お化け”がいたときのほうが活気があった」と言われないような進化を目指さないといけない。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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