(このひとに5つの質問)林 勝哉 テン・アローズ社長

(このひとに5つの質問)林 勝哉 テン・アローズ社長

女性用下着販売のテン・アローズ(旧シャルレ)で起きたお家騒動。株主総会の場で出された修正動議による前社長の“解任”から約1カ月、創業家の林勝哉社長が本誌取材に応じた。(『週刊東洋経済』8月4日号)

前経営陣は第三者増資で創業家排除を狙っていた

1 いったん退任したテン・アローズに経営復帰した動機は。

 前経営陣と考え方に違いがあり、私は昨年春にグループ経営を離れ、一事業会社の責任者となった。その後、成長戦略を策定してもらうよう(株主として)前経営陣に期待したが出てこなかった。業績も思わしくなく、けじめが必要だと考えた。三屋裕子前社長は代理店への求心力があり、残ってもらいたかった。しかし、前経営陣は1人でも欠ければ全員辞めるとの意思が固く、残念な形となった。創業家の意向を反映するために経営参画を決意した。

2 総会動議という異例の手法で前経営陣を退任させた。

 前経営陣と役員構成をどうするか交渉を重ねていたところ、創業家の持ち株比率を希薄化させるための第三者増資が検討されているとの情報が5月ごろに社内の一部から入った。相談していた法律事務所から、株主提案で前経営陣を刺激するのはよくないとのアドバイスがあり、いったん交渉を中断し、総会で修正動議を出す方法を選択した。ただ、総会の2週間前には事前通知をしている。本当は両者で合意したかった。

3 経営陣交代で社内に混乱は。社員をどうまとめていくか。

 総会の翌日には全体の朝礼を行い、情報や私の思いを共有したいと語りかけた。意見箱を設けて無記名でもいいので意見を寄せてもらっている。できるだけ距離感を縮めて自由に議論できる風土をつくりたい。総会直後に混乱があったのは確かだ。前経営陣に近い3人が退社したが、かなり多くの社員は今後に目を向けてくれている。

4 代理店など取引先に影響は。すでに説明は行ったのか。

 約2000人の代理店がおり、東京と神戸で経緯の説明をした。いろいろな思いをしている人がいたが、あまり動揺もなく、温かい言葉をかけてくれた人もあった。

5 新旧の経営陣は何が違うのか。今後の経営目標は。

 前経営陣はほぼ全員が外部の人材だった。新経営陣は事業に精通する生え抜きを多く登用した。(実母で元社長の)林宏子は無報酬でやると言ってくれている。前経営陣は東京在住の人が多く、取締役会も東京での開催だったが、今後は神戸で開く。

 目標は二つ。コア事業を早期に抜本改革したい。また、30年培ってきたノウハウや人材を活用できる機能性商品の開発など新事業も行いたい。インターネット販売にシフトして代理店を「中抜き」するのでは、といった情報も一部で流れたが、それは違う。代理店の訪問販売という強みを大きく変えるつもりはない。それにプラスアルファとして若い世代などにアプローチするチャネルを確立したい。

(書き手:高橋篤史 撮影:今井康一)

はやし・かつや
関西学院大学卒業後、伊藤忠商事を経て2000年にシャルレ(現テン・アローズ)入社、04年12月副社長。06年3月にグループ会社「がいS」社長に転じ、07年6月にテン・アローズ社長。創業者の長男、38歳。

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