深夜の「満員電車ゼロ」なら簡単に実現できる 東京の鉄道「終夜運転」も難しい話ではない

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ナイトタイムエコノミーを成功させるために、終夜運転より先にすべきことがある。22時以降、特に23時台、0時台の満員電車ゼロである。

品川駅を例に説明しよう。

どの路線も23時台、0時台の運行本数が極端に少ない。そして、金曜や忘年会シーズンの晩は、積み残しが出るほどの満員電車となる。本数が少ない分、待ち時間も長い。混雑や途中駅での他路線からの接続待ちで、遅れることも多い。

深夜帰宅の多い人は、そういったことをよく知っており、できれば早めに帰宅したいと考えている。それでも帰宅の遅くなった人を運びきれないほど、金曜の夜は輸送力が不足している。

土曜の晩にも満員電車が出現する。土休日ダイヤで平日よりも運行本数が少ないにもかかわらず、利用者数はそこそこ多いからだ。筆者が、昨年12月16日土曜日の23時30分前後にスマホのJR東日本アプリで、新宿付近を走行する山手線5列車の混雑具合を表示させ、画面キャプチャーしたものを示そう。多くの車両が朝ラッシュ並みに混雑していることがお分かりいただけるだろうか。

昨年12月16日土曜日23時30分頃の山手線の状況。朝ラッシュ並みに混んでいるのがわかる(筆者撮影)

車掌は「運転間隔が乱れたために混雑し、……」と放送していたが、輸送力不足のために列車が混んでいたのだ。

深夜の満員電車ゼロ実現のために必要な輸送力を確保するために地上設備の改修や車両の増備は不要だ。運転士・車掌の人件費と電気代を掛けるだけで実現できる。駅の仕事は、混雑がなくなる分、むしろ減る。

こんな状況は東京圏の多くの路線に共通だ。深夜の時間帯でも快適に電車で移動できるようにすることも、ナイトタイムエコノミーの成功には不可欠である。

阿部 等 ライトレール社長

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あべ ひとし / Hitoshi Abe

1961年生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修士課程修了。1988年JR東日本入社。2005年ライトレール創業。交通や鉄道にかかわるコンサルティング・研究開発に従事。著書に『満員電車がなくなる日 改訂版』(戎光祥出版)。

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