変貌する中国、「ペットに浪費をする社会」へ 単に「ペット社会」というだけではない

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とはいえ、全国的には、ペット経済は人口動態の変化にも後押しされ、繁栄していることは間違いない。

「中国社会は高齢化が進み、出生率が低下している。子どもが成長して家を出た後に残された親、そして自立した生活を送る若者がいる」と、厚生投資の共同創設者Zhang Tianli氏は指摘する。ペットは人々が「精神的な支え」を見つけるのに役立っていると付け加えた。

ペット製品のブームは輸入をかき立て、中国経済を押し上げている。

少なくとも中国で、グローバルな大手企業に挑んでいる国内企業には、上海ブリッジ・ペットケアやサンサン・グループ、Navarchなどが含まれる。ペットフードメーカーの煙台中寵食品<002891.SZ>は8月に深セン証券取引所に上場して以降、株価が60%近く上昇した。

写真は12月22日、北京にあるペット向けリゾート施設のレストランで撮影(写真:ロイター/Jason Lee)

小規模な新ビジネスも盛んだ。DogWhere.com(狗狗去哪児)はペット向けの休暇を提供しており、北京でペットホテルを経営している。同ホテルにはペットのためのあらゆるアメニティーがそろっており、スイミングプールやペットのサイズに合わせたベッドルーム、映画館などが完備されている。1泊数千ドルの費用を飼い主たちは支払う。

「私たちのホテルに犬1匹が47日間滞在したことがあるが、その費用は合計で1万7000元(約30万円)だった」と、同サイトのマーケティングマネジャー、Wang Chaoさんは言う。

北京でウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウエスティー)専門の人気グルーミング店を営むXiao Xudongさんは、遠く離れた最西部の新疆や南西部の雲南省から飛行機でやって来る若い常連たちが増えていると話す。

「消費において、若い人たちは年配の世代とは異なる価値観をもっている」と、45歳のXiaoさんは言う。「彼らはペットの手入れにこだわり、大金を使うことを惜しまない」

犬肉を食べる習慣の是非を巡る議論が再燃

増えているとはいえ、中国でペットを飼うことはまだ新しいトレンドだ。一部のペットは虐待され、ワクチン接種や避妊・去勢についての知識も欠如している。ペットフードの輸入に関する厳格な規制がグレーマーケットでの取引を活発化させてもいる。

国営の新華社通信が12月に伝えたところによると、犬を殺すための毒矢を売っていたギャングのメンバーが逮捕された。殺された犬の肉は飲食店に売られていたとされ、犬肉を食べる習慣の是非を巡る議論が再燃している。

写真は12月22日、北京にあるペット向けリゾート施設のレストランにて(写真:ロイター/Jason Lee)

国の認可を受けた平陽のペットタウンでは、それでもなお、ペット飼育に向けて社会がシフトしているのは明白だと、あるペットショップのオーナーは話す。

「10年前、ここは基本的に農地で、人々は犬を食べていた。今ではそれほど犬を食べることはないし、ペットとして犬を見るようになっている」と彼は話す。

このペットショップで、Wang Jingさん(26)は飼っている犬2匹、キャンキャンとニウニウを定期的にお風呂に入れている。Wangさんは1カ月あたり約2000元(約3万5000円)を犬に使っている。その大半は食費だ。だが、その価値は十分にあると彼女は言う。

「(犬たちがいなければ)帰宅しても誰もいない」とWangさん。「でも犬を飼っていれば、ドアを開けると喜んで飛びついてきてくれる」

(Anita Li and Adam Jourdan 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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