「減塩」は、どうしてこんなにも難しいのか 自分だけでできることは限られている

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「ほとんどの人は健康のために減塩すべき」との見解も(写真:taa / PIXTA)

食塩の取りすぎがどれほど体に悪いのかとなると、実はよくわからないという人がいても不思議はない。食品からのナトリウム(食塩つまり塩化ナトリウム分子の質量の約40%を占める)の摂取を減らすことは健康維持に欠かせないとする主張に対し、減塩は健康に悪影響を及ぼしかねないとの反対意見もあるからだ。

減塩の必要があるのは塩辛い食べ物を多く食べ、血圧が高い人たちに限られるとの研究も一部にはあるものの、「ほとんどの人は健康のために減塩すべき」という保健当局などの呼びかけは強力な科学的知見に支えられたものだ。欧米社会において高血圧の主な原因は過剰なナトリウム(つまり食塩)摂取にあり、高血圧は心臓発作や脳卒中、腎不全の大きなリスク要因だ。

私たちの口に入るナトリウムの主な出所は加工食品や外食であり、自宅で作る食事ではない。つまり、そうした食べ物の影響を受けやすい人々の健康を守るには、社会全体で減塩への取り組みが必要なのだ。

スープとサンドイッチだけで1日の必要摂取量に

米国では健康な成人の場合、1日当たりのナトリウム摂取量を2300ミリグラムに抑えることが推奨されている。これは食塩換算で小さじ1と1/8杯に相当する量で、来年中ごろ以降に導入される食品の新しい栄養成分表示にも反映される予定だ。現在、米国人のナトリウム摂取量の平均は1日当たり3400ミリグラム以上。レストランで食事をすれば1度で終わってしまうくらいの量だ。スープとサンドイッチの昼食でも、1日分のナトリウム摂取量に容易に達してしまう。

だが2016年に『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』で発表された研究によれば、ナトリウムの摂取量を1日当たり平均400ミリグラム減らしただけで、年に2万8000人の命を救い、70億ドル相当の医療費を節約できる可能性があるという。

減塩を呼びかけたり、具体的な目標を設定した世界75カ国では、高血圧の人の割合や循環器系疾患による死亡率が減少したという。

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