創業100年「TOTO」が成長し続ける根本理由 TOTO社長「M&Aも、優れた経営者も不要だ」

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TOTOと同じように、お客さんと商品を一番大事にする会社が「一緒になりたい」と言ってくれるなら、喜んで一緒になります。でも残念ながら、そういう会社は絶対に売りに出ません。

――いい会社はマーケットに出ない。

絶対出ませんね。正直にいうと、一緒になれたらいいなあ、と思う会社がないわけではありません。うちと似た文化の会社は、実は世の中にたくさんありますから。でもそういうところはどうやっても買えない。

逆に売りに出ている会社には必ず、何らかの理由があります。なぜ売りに出たのか、それが一番肝心なのです。投資銀行など買収案件を持ち込む側はみんないい話しかしません。「後継者がいないので」と説明されることもありますが、「何を言っとんねん、育てればええやん」とこちらは思うわけです。

だから僕らは、「なぜこの会社は売りに出ているのか?」を納得がいくまで調べます。特に海外の会社なんかは実態がわかりにくいから、いろんな機関を使って徹底的に調査します。工場を見て、社員の雰囲気を確かめます。そうすると結果的に、買わないという結論になるのです。

経営理念は社員のためじゃない

初代社長の大倉和親氏。日本とアジアの生活水準の向上を目指して、会社を立ち上げた(写真:TOTO提供)

――TOTOは創業100年の長寿企業。そもそも、どういう由来の会社なのでしょうか

はじまりは大倉和親(大正期の実業家。1875~1955年)とその父が欧州を旅し、現地の衛生陶器に驚嘆したことです。西洋の文化的な衛生陶器を東洋に広げたいと考え、今の3億~4億円に相当する私財を投じて研究所を作りました。「東洋陶器」というかつての社名には、こういう思いが凝縮されていました。儲けたいというよりも、日本とアジアの生活水準を向上させることを目指して始まった企業なのです。

和親は2代目社長に、書簡でこう伝えています。

「どうしても親切が第一
奉仕観念をもって仕事をお進め下されたし
良品の供給、需要家の満足が掴むべき実体です
この実像を握り得れば、利益・報酬として影が映ります
利益という影を追う人が世の中には多いもので
一生実体を捕らえずして終わります」

よい商品を供給し、需要家に満足してもらい、その結果として利益が生まれる。決して、利益を先に求めてはいけない。そういう意味です。大事なのは、これは社長から社長へ語られた理念だということ。社員にも覚えていてほしいですが、上に立つ人間こそが理解しなければならない。経営トップや取締役、執行役員はこの言葉をいつも胸に秘め、これに反することを絶対にやらないように努める。

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