【産業天気図・鉄鋼】08年度後半の晴れから一転、2009年度は極度の視界不良に。原料騰勢、需要動向次第では一気に天候悪化も

予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

 
 2008年度後半の鉄鋼業界は製品値上げの浸透に伴って、「好天」を満喫することになりそうだ。ただ、09年度に目を移すと、情勢は不透明感が強い。ひとまず「曇り」としておくが、現実的には未だ「五里霧中」という表現の方が適切かもしれない。

今年度の鉄鋼業界には原料高の荒波が押し寄せた。高炉メーカーが原料に使う鉄鉱石は、ブラジル産が前08年3月期比65%増、豪州産は最大で同2倍弱まで跳ね上がり、原料炭に至っては同3倍という高騰を見せた。こうした原料要因に伴うコスト増は、業界全体で前期に比べて3兆5000億円に上る見込みだ。ただ、大幅な原料高を想定していた鉄鋼各社は、例年よりも前倒しで08年初にはユーザーに対し製品値上げへの理解を求め始めていた。その結果、6月までに3割超の大幅値上げで大半のユーザーと合意に至っている。08年度後半にかけては、こうした値上げ効果が寄与し、収益は大幅に改善する見通しだ。

ただし、来10年3月期に関しては、未確定な要素が山積している。まず挙げられるのが、需要面の動向だ。9月19日の定例会見で、日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日本製鉄社長)は「日本の鉄鋼需要は、建設向けを除けば、総じて堅調」との見方を示している。しかし、同時に「周辺環境の変化が需要に影響を及ぼさないことはない」とも語っており、世界経済の減速が目下堅調な鉄鋼需要に水を差す可能性を否定していない。造船向けは依然として4年程度の受注残があるものの、自動車・建設機械は欧米での需要に陰りが見えており、機械向けも企業の投資意欲が減退するなかで縮小ムードが漂う。

原料サイドにも不安要素が付きまとう。08年度に大幅な上昇を見せた鉄鋼原料価格だが、09年度も再騰する可能性が高い。特に鉄鉱石に関しては、08年度分の交渉において、ブラジルと豪州の同率値上げという暗黙の商慣行(ベンチマーク方式)が崩れてしまった。08年度は割を食ったブラジル資源大手のヴァーレが更なる増額を要求してくることは必至。高炉メーカーはもう一段の原料負担を負う可能性が高い。さらに問題となるのは、景気減速を受けて、製品値上げ交渉は今期以上の難航が予想される点だ。原料高騰のかなりの部分を製品転嫁によって凌げた08年度とは異なり、09年度は原料負担の大部分を鉄鋼メーカーが背負わされることも想定される。

こうした原料高の情勢を受けて、これまで鉱山投資には必ずしも積極的ではなかった新日本製鐵<5401>が、持分会社のウジミナス(ブラジル)を通じて、現地の鉄鉱山会社を買収するなど、自社原料確保への具体的な動きも出始めている。一方、住友金属工業<5405>がブラジルにシームレスパイプ専用の一貫製鉄所建設に着手しているほか、ジェイ エフ イー ホールディングス<5411>子会社のJFEスチールも同国で半製品(スラブ)用製鉄所の建設に向けた事業化調査を進めるなど、原料立地かつ欧米や新興国向けの生産拠点にもなりうるブラジル発の供給網整備を加速させている。安価な海外原料を船舶で輸入し、臨海型製鉄所で鋼材を生産したのち、再び船舶で鋼材を国内外に輸送するというビジネスモデルで世界的な優位を築いてきた日本製鉄業は、いま転換点を迎えつつある。
【猪澤 顕明記者】

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