地図のゼンリン、「自動運転」で高まる存在感 地図データをめぐり、業界動向は活発化

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パイオニアやパスコ、アイサンテクノロジーに至っては年初から下落し、各3.4%、14.8%、19.6%下げており、全体相場に大きく負けている状況だ。パイオニアは上期26億円の最終赤字と苦戦していることも期待を裏切っているようだ。

その中で、ゼンリンは業績の堅調さもあって78.5%もの上昇を見せた。住宅地図データと各種統計データなどを組み合わせた地理情報サービスが法人や官公庁・自治体向けに堅調だった。また、カーナビ用のデータ提供も好調が続いており、2017年4~9月期(上期)の業績が営業利益4.7億円(前年同期は3.7億円の赤字)と大幅な黒字化を果たした。

エヌビディア関連銘柄としても上昇

もう1つ株価を押し上げた要因が2017年初に発表した米エヌビディア社との提携だろう。

トヨタ、テスラ、アウディなど世界の自動車大手と相次ぎ提携するなど、エヌビディアのGPU(画像処理用半導体)はAIと相性のよさが受けて引っ張りだこ。その注目企業がちょうど1年前にラスベガスで開催されたCES 2017という大イベントの場でゼンリンとの共同研究開始を発表したことで大きな話題を集めた。

AIが強さを発揮するのは適切なビッグデータを食わせること。そうした意味では、ゼンリンがもつ膨大な地図関連のビッグデータを素早く処理できるエヌビディアとの組み合わせは絶妙だった。

ゼンリンとしては、「取得した画像から効率的に地図データに変換することで整備工程の効率化を図ることが目的」と共同研究の狙いも明確だ。

ただ、注目される自動運転分野だが、それ自体の本格的な収益貢献は2020年以降になる見通しだ。それでも、そのアナウンス効果でカーナビ向けが堅調に推移し、引き続き地図データを活用したソリューションビジネスが拡大しそう。積極的なソフトウエア開発投資をこなしつつ増益が見込まれ、増配などの積極的な株主還元も維持しそうだ。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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