グルジア戦争で新たな冷戦時代が幕開け、序盤戦はロシア優位で進む

8月に勃発したロシア・グルジア戦争により、新たな冷戦の時代に入ったという認識が世界で広まっている。先に手を出したのはグルジアである。グルジアのサーカシビリ政権は2003年のバラ革命で誕生した。政権を握ったのは、米国で学び・働いた経験のある、自由主義を信奉する若いエリートたちである。

彼らはグルジアの歴史をロシアから切り離して、未来をヨーロッパに結びつけようとしている。具体的にはグルジアの領土を保全しながら、NATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)に加盟することが目標になっている。

こうしたグルジアの動きはロシアにとっては不快なものに映っていた。4月にグルジアとウクライナがNATO加盟への交渉のテーブルに着こうとしたとき(MAP=加盟行動計画への参加)、ロシアの国防相は「いかなる手段を取ろうともこれを阻止する」と声明を発表し、NATO諸国、特にロシアからエネルギー供給を受けているフランス、ドイツを威嚇してこれを阻止している。

グルジア二つの誤算

グルジア領内にはソ連時代の遺産である南オセチア、アブハジアという二つの「国家内国家」があり、ロシアの庇護下にグルジアからの分離独立を求めていた。

サーカシビリ大統領は、北京五輪の開催期間を見計らい南オセチア奪回を目的に侵攻したが、北オセチアから進入していたロシア軍に反撃され、逆にグルジア領内に深く侵攻される結果になった。

グルジア軍の規模は約2万5000人程度といわれ、しかも当時2000人がイラクに派遣されていた。一方、グルジアに侵攻したロシア第58軍だけで兵力2万人、戦車・装甲車500台という規模である。

首都トビリシなど全土が爆撃を受けただけでなく、道路、港湾は封鎖され、ヒトとモノの流れが止まり、グルジアは大きな打撃を受けた。

欧米はロシアが過剰に反撃して、グルジア領内に奥深く侵攻したことで、衝撃を受けている。

コーカサス情勢に詳しい静岡県立大学国際関係学部准教授の廣瀬陽子氏は、サーカシビリ大統領の冒険主義的な政策の背景として、「戦争が始まれば、米国からの軍事的支援が受けられると本気で考えていた」と指摘する。廣瀬氏は「さらに北京五輪の期間中なら、ロシアの反撃も抑制されたものになると予想していた」と、二つの誤算を指摘する。

だが、欧米からのグルジアへの軍事的支援もなく、ロシアへの経済制裁さえなかった。この結果、ロシアはグルジア戦争で勝利したという見方(英『エコノミスト』誌など)が欧米で広まっている。

欧米が怖くないロシア

外務省国際情報局長、駐ウズベキスタン大使、駐イラン大使を歴任した孫崎享防衛大学校教授は、「ロシアは欧州が分裂していることで強気になっている。グルジア、ウクライナのNATO加盟に積極的な国はイギリスとポーランドくらい。EUの中枢であるフランスとドイツは腰が引けている」と指摘する。

ロシアの自信を深めているもう一つの要因は経済事情の好転である。

ロシアは石油と天然ガスを合計すると、「サウジアラビアを抜いて世界一のエネルギー生産国であり、特にフランス、ドイツは天然ガスの約30%をロシアに依存している」(本村真澄・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席研究員)。

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