メルカリ「即時買い取り」、CASHと何が違う? フリマとの「使い分け」ニーズを掘り起こす

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売上金の使い勝手という点では、メルカリに軍配が上がりそうだ。CASHは現状、250円の手数料で現金として引き出すしか選択肢がないが、メルカリはアプリ内通貨の「メルカリポイント(1ポイント=1円)」に変換し、フリマで売られている商品の購入に充てることができる。もちろん、現金としての引き出しも可能だ(引き出し額が1万円未満の場合は手数料210円が必要)。

またメルカリは今後、メルカリナウの査定金額を表示する画面に「メルカリ(フリマ)では類似商品が〇〇円で取り引きされている」といった補足情報を付加し、そこからフリマ出品へ簡単に移行できる導線の準備も進めているという。

フリマか即時買い取りか、メルカリとしては同一アプリの中で選択肢を増やしたい方針だ(撮影:今井康一)

「同じユーザーにも、時間に余裕のあるときとないとき、自分で工夫して高く売りたいモノとすぐにでも処分したいモノがあるはず。シーンによって使い分けてもらえれば」。メルカリナウのサービス開発責任者を務める石川佑樹プロデューサーはそう話す。同社が即時買い取りを別アプリに切り出さず、フリマアプリ内の1機能にした狙いはここにある。CASHにはない強みといえそうだ。

1日の買い取り上限「1000万円」がネック

両サービスとも始まって間もないだけに、共通して抱える課題もある。その一つが、1日あたりの買い取り総額の上限が「1000万円」という点だ。リリース当初はたった数分で、現在でも数時間で上限に到達してしまい、買い取りの受付を終了することがある。いつでも利用できる状態ではないのだ。ニーズの大きさに鑑み、「(上限金額を)早期に引き上げられるよう検討している」(メルカリナウの石川氏)という。

もう一つの課題は、買い取り対象のアイテムが今のところアパレルなどのブランド品に限られている点だ。これについては、現在対象ではない手作り品やノーブランドの商品も「メルカリ(フリマ)の中で流通しているので、査定することは不可能ではないと考えている」(石川氏)。フリマで取引の多いインテリア関連品、キッチン用品、手作りアクセサリーなどが対象になると、サービスとしての奥行きがぐんと深まりそうだ。

「ポスト・フリマ」ともいわれる巨大市場をどこまで掘り起こせるか。競争は始まったばかりだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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