2018年に日銀は出口への一歩を踏み出すのか 年後半に長期金利の誘導目標を引き上げ?

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黒田総裁は続投?日銀も一歩を踏み出すのか(撮影:今井康一)

ただし「出口戦略」ではない?

ただし、前述の鵜飼氏は、物価は目標の2%にははるかに届かず、「長期金利ターゲットを引き上げても、金融緩和の程度の調整にとどまり、出口戦略の一環ではない」と見る。山口氏も「長期金利ターゲットを0.25%程度に引き上げた後、2019年末までは据え置く」と予想する。

FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げを進め、ECB(欧州中央銀行)も2018年1月から量的緩和の縮小に着手する中、「日銀も出口に向かう」というほど簡単ではなさそうだ。

日銀は12月28日に、12月20・21日開催の金融政策決定会合における「主な意見」を公表した。その中には「今後、2%に向けて物価が上昇し、経済の中長期的な成長力が高まるもとでは、金融緩和政策の効果は強まることになる。そうした環境変化や政策の副作用も考慮しながら政策運営にあたることが必要である」「先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整の要否を検討することが必要になる可能性もあるのではないか」などといった意見もあった。

物価をめぐっては、企業の慎重な価格設定の姿勢は続くと思われるが、足元では世界経済が拡大し、原油価格も回復。国内では人手不足感が募り、企業収益は最高益といったかつてない好条件が確かにそろっている。そこでこうした政策委員会の雰囲気も踏まえれば、日銀も小さな一歩を踏み出すのかもしれない。だが、その先にはまた、米国の利上げや中国経済の減速による世界景気転換のリスク、日本のオリンピックに向けた財政拡張が一巡することの影響など雲もかかっている。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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