34歳でプロ野球を去る男が面した挫折と復活 一度は「戦力外」も味わった八木智哉の半生

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八木智哉。一度は「戦力外通告」を受けながらも不死鳥のごとくプロ野球の世界に舞い戻った経歴を持つ(撮影:今井 康一)
2017年も多くの選手がプロ野球界を去った。「戦力外通告」のわずか一言で、一瞬にして職を失う。そんな選手たちの野球人生最後の時をドキュメンタリーで描いてきたTBSテレビ「プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男たち」が、今夜(12月30日)10時から通算14回目の放送を迎える。
今年は本編にかかわるサイドストーリーを2回(「37歳『松坂世代』から見たプロ野球と松坂大輔」「中後悠平「戦力外」から米国で甦った男の決断」)にわたって東洋経済オンラインで配信してきたが、本編放送直前の特別企画として、一度は戦力外通告を受けながらプロに復帰し、今年ユニフォームを脱いだ男の半生を追う。

「いやー、未練しかないですよ…プロ野球選手になった時に、35歳まではやりたいと思っていたんですけどね。あと1年……惜しかったなぁ」

そう言って、男は少しだけ寂しそうに笑った。

八木智哉投手、34歳。2006年にパ・リーグの新人王を獲得した男は、今年ユニフォームを脱ぐことを決断した。しかし、その寂しそうな笑顔には、確固たる強い想いが潜んでいるようにも見えた。その理由が知りたい。そう思わずにはいられなかった。

野球にすべてを捧げてきた人生

小さい頃から、野球だけだった。

中学時代に全国大会に出場し、高校3年の夏には甲子園の土を踏んだ。そして、大学4年の時、全日本大学野球選手権大会で49奪三振の大会記録を樹立。この記録は、いまだ誰にも破られていない。多くの野球少年と同じように、八木は、プロ野球選手になることを夢として描いてきた。

そして、希望入団枠で北海道日本ハムファイターズへ。契約金1億円、推定年俸1500万円と最高の評価での入団だった。

「開幕一軍入りし、新人王をとれるようになりたい」。八木のその言葉は現実のものとなった。プロ1年目でいきなり12勝をマークする。

ダルビッシュ有らとともに先発の柱として活躍し、リーグ優勝に貢献した。続く日本シリーズでは、第二戦に登板して白星をあげ、日本一の立役者の一人となった。パ・リーグ新人王にも輝き、その年のオフには大学時代から交際していた知佳さんと結婚。八木の未来は、一点の曇りもなく、明るく輝いているように思えた。

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