ソニーの開発責任者が語る新生アイボの未来 家電製品との連携は?海外展開は?

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――メンテナンス性に関してはいかがでしょうか。22軸のロボットを長期間、メンテナンスサポートを提供できるのでしょうか。

初代AIBOシリーズはモデルチェンジを5回行いました。しかし、これだけの複雑な構造体となると、ちょっとした動きのバランスが変化しても、細かく動きのプログラムを調整しなければなりません。各モデルごとにチューニングが必要で、それはメンテナンス時も同じことでした。ちょっとした筐体剛性の違いがモーションの違いにつながってしまいます。

新しいaiboでは過去の反省を踏まえて、長期間、大きな変更なく使える機構設計を施します。モデルチェンジを行うとしても、基本の骨格は変えず、基本的には同じ構造、同じアクチュエータを使い続けます。そうした長期的な視野の設計アプローチによって、同じモーションを実現するためにたくさんのモーションプログラムを作らねばならないといった問題を排して、管理などをシンプルにできます。

――動作軸が旧来のAIBOよりも増えていますが、どのような動き、メカ設計上の違いがあるのでしょうか。

前世代のAIBO最終モデルはER7というモデルですが、大きな違いはクビの“かしげ”と腰を振る動作です。クビをかしげることで、かなり表情や思っている心情を伝えることができる。

一方で設計上、大きな挑戦となったのは“腰を振る”動作ですね。ここはかなり難しい部分です。以前のAIBOは、メインシャシーとなるボディーがお尻までまっすぐボックス型に存在していますが、腰を動かすには本体を分断して、そこに動きを表現する可動部を設けねばなりません。メインシステムとバッテリーを収める部分がかなり小さくなるため、その部分での設計上のチャレンジはありました。

――電源を入れると、しばらくして、気だるく、しかし頑張って起き上がる、どこか仔馬の誕生に近いシーケンスで動き始めますね。これは意図的なものでしょうか。

新しいaiboの目標として、ロボットに“生命感を与える”というものがありました。aiboが起動される。それは目覚めともいえるので、生きている犬が眠りから覚めていく様をイメージして、システムのブートシーケンスに合わせて動くようにモーションをプログラムしています。実際にブートシーケンスが終了すると、犬らしく伸びをしたりする。その眠い、けだるい雰囲気は本当の犬の振る舞いを観察し、aiboのモーションとして取り込みました。

ペット型から犬型ロボットへ

2017年11月1日の発表会で披露されたaibo(筆者撮影)

――簡単に“モーション”といっても、動きの連動タイミングがズレただけで雰囲気を損ないますが、新しいaiboはちょっと艶めかしいぐらいにかわいい動作をします。このあたり、以前のAIBOが“ペット型ロボット”と称していたのに対して、今回は“犬型”と明確にしていることとも関係しているのでしょうか。

“犬を再現しよう”と明確にテーマを持っていたわけではありません。新しいaiboの開発テーマは“生命感”です。生き生きとした命が宿っているかのような動き、雰囲気を出そうと。その中で技術的にはアクチュエータの動作音を静かにしたり、より雰囲気のある動きをと開発を重ねていったところ、現在の犬型デザインに落ち着いたのです。もちろん、ソニーのAIロボティクスを象徴する製品としてAIBOがあった、ということも影響はしています。

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